第17章 見えない未来
「それから昨日、真剣に怒ってくれて、その、あ・・・ありがとう」
俺の言葉の後に、マリーは何度も何度も大きく首を振りながら俯き加減の顔を横に向けると、地面に小さな雫が落ちた。
「マリー、泣かないでよ・・・顔、上げて?」
そっとマリーの頬に手を当てて俺の方を向かせれば、瞬きをする度に涙の粒が落ちる。
それはドラマとかで見るような涙とは違って、キラキラとしていて。
『私も、叩いたりしてごめんなさい』
そう言ったマリーの手が、俺の頬に触れる。
『・・・痛かったでしょう?』
「うん・・・まぁ」
けど、そうじゃなくて。
「あの後ヤマさんに呼ばれて話したんだけど。その時ヤマさんが、叩かれたお前が痛いのはそれだけの事をしたんだから当たり前だ、って。だけど、お前の事を叩いてしまったマリーは、叩かれた俺よりもずっとずっと心が痛むんだって」
ヤマさんにそう言われた時、マリーに叩かれた頬よりも、ずっとずっと胸が痛くなった。
だから昨日の夜は、マリーが俺の部屋をノックしたのも分かってたけど、どんな顔したらいいのか分からなくて・・・マリーの気配がなくなるまで、ベッドで布団被ってた。
「俺、マリーを、泣かせたり怒らせたりばっかだな」
頬に当てられた手にそっと自分の手を重ねて、そのまま引き寄せて抱き締めると、その体の小ささに驚いた。
いつも仕事の時は堂々と胸張ってるから、いざこうしてみると・・・思ってる以上に華奢なのが分かって。
だからバンちゃんもゆきりんたちも、TRIGGERのみんなも・・・守ってあげたいって思うんだなって、実感する。
そんな細い肩口に顔を埋めて・・・俺、ちゃんと頑張るからと気持ちを込めて。
「ホント・・・ごめん・・・」
そう、小さく呟いた。