第17章 見えない未来
環「うん・・・俺が・・・えっと・・・マリーの事を変に誤解してケンカみたいになったとき、だけど」
愛聖と環くんが、ケンカ?
それはまた珍しいというか、なんというか。
だって愛聖は楽に、事務所変わって寂しくないか?なんて聞かれた事があったけど、愛聖は笑いながら背中を叩いてくれるお兄さんと甘えてくれる弟がいっぺんにたくさん出来たみたいだから大丈夫って言ってたし。
一織くんはクールで甘えてくれるタイプだはなさそうだから、きっとそれは環くんなんだろうなって思ってたけど。
環「マリーはさ、ウチの事務所に来る前はそっちにいたじゃん。けど、こっちに来てからは俺たちの後輩で、新人だからとか言ってて。だけど、なんかいろいろあって俺たちより先にデビューとかして、ズルいって言い合いになって・・・ケガとか、させちゃったり」
ケガ・・・?
「それってもしかしてミューフェスの時の?」
思わずそう聞くと、環くんはバツが悪そうに小さく頷いた、
あれ、でも確かあの時の愛聖はちょっと転んで骨折しちゃって・・・とか言って笑ってたけど。
環「あの少し前に、俺はみんなと・・・ちょっと揉めちゃって。止めに入って来たマリーに、離せって振り払ったらマリーが転んで・・・だからあのケガは、俺のせいだ」
そういう経緯があったのか・・・
環「仲直りした時にマリーが言ってた。自分がみんなに好かれなくてもいい、自分が演じた役柄を好きになって貰えればそれでいいんだって。女優の仕事はドラマとか映画とかを見る人がマリーのやってる役に自分を重ねて、泣いたり笑ったり、あと恋する気持ち?とか、なんかそういうのを感じて貰えればいいんだって」
「そうだね・・・オレも前に落ち込んでた時、愛聖のおかげで元気になった事があるよ。オレの場合はちょっと感じが違うけど」
あれはまだTRIGGERとして動き出す前、故郷の訛りを早く直せ、今までの自分を早く捨てろ!と社長に叱られた後だったな。
捨てる必要なんてない、TRIGGERとしての顔と本当の自分、どっちもあっていいんだって。
TRIGGERの十龍之介じゃなくて、本当の十龍之介を大事にしてくれる人に巡り会えたら、その人に自分を全部見て貰えばいいんだから、って。