第17章 見えない未来
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
環「俺は別に、人気とか決まり事だとか、そんなのどうでもいいって思ってた。俺には、大事な目的があったから」
仕事が終わってフラリと出て行った楽や天の事を考えながらゼロアリーナへと来れば、ぼんやりと佇む環くんを見つけ、声を掛けた。
随分と落ち込んでる感じもしたし、日頃からオレを慕ってくれているのもあって、ほっとけなかったし。
環「けど・・・みんなが一生懸命にやってると、俺も頑張らなきゃって思った。 辛い思いをさせたら、ちゃんと心の底からごめんなって思ったし、凄いヤツとか見ると悔しいし、ムカついたけど・・・憧れた」
環くんは口下手で、普段からあまり自分の気持ちとか話さなさい事が多くて誤解される事が多いって愛聖から聞いてたから、こんな風にいろいろと話しているのを見ると、やっぱりなにか思い詰めてるんだろうなと感じることが出来る。
自分より凄いヤツにムカついて、でも・・・憧れて。
自分も負けたくなくて、追い付きたくて努力を重ねて。
「・・・分かるよ。環くんのその気持ち、オレにも」
環「あんたたちにはわかんねぇよ。ずっと勝ちっぱなしじゃん」
「違うよ・・・カッコつけて見せてるだけだよ。その裏側では、必死にもがいて、ダサくてもボロボロになるまで頑張って、そんな自分が情けなくなる時もある。それでもカッコつけるのは、自分のプライドの為じゃない・・・一瞬の夢の為だ」
オレがそう言うと環くんは一瞬の夢?と問い返して、オレは頷いた。
「辛い時も悲しいこともたくさんある。本当のオレを知って欲しくて全部吐き出したくなる時だってある。でもそれと同じくらい、そんな弱いところを絶対に見せたくないって思う自分もいるんだ」
環「・・・なんで?」
「オレは、自分が愛されたい訳じゃない。オレの歌やダンスがTRIGGERの1部となって愛されたいんだ。オレが好きだから失敗しても褒めるとか、嫌いだから成功しても貶すとか、そういうのを全部越えてオレの歌やダンスを好きになって欲しい。大切に育てたこの力に誇りが持てるように、いつもそう願ってる」
それは少し、愛聖の受け売りでもあるけど。
そう思った時、環くんが言った言葉に思わず苦笑を浮かべた。
環「マリーと、おんなじこと言うんだな」
「愛聖?」