第17章 見えない未来
こんなにも自分が走り続ける日が来るだなんて、今まで考えた事もなかった。
信号で止まる度に上がり切りそうになる呼吸を整え、膝が震えてしまいそうな足に、もう少しだから頑張れと祈って。
こんなにも誰かの姿を求めて走るだなんて、今までなかった。
もう何度目かという信号待ちで足を止め、ふと横を見れば・・・そこには、ここにいるのが佐伯 愛聖だと分からないほど髪は風に乱れ、羽織ったパーカーは着崩れてしまっていて苦笑して、呼吸を整えながら髪も衣服も直して、信号が青に変わるとまた駆け出した。
あと少し、もう少しだ・・・この先を曲がればゼロアリーナに続く広場が見えて来る。
信号が点滅を始める横断歩道を駆け抜け大通りを曲がると、漸く広場への入口へと着いた。
案内板の前に移動して、現在地を確かめる。
『ここからだと、ゼロアリーナまではまだ少しあるのか・・・』
案内板の地図を眺めながら、目的とする場所までの近道はないものかと指先で地図を辿ると、行く道々に小さな憩いの場の様なものがあり、そこを抜け道として使えば近道になるように思えた。
よし、行こう。
パタパタと足音を響かせながら、日も沈み人影もまばらとなった広場を走る。
途中でいい感じにみんなが現れてくれるといいんだけどな・・・なんて、世の中そうも上手くは行かず。
人影を見つけてベンチに向かえば、それはもう見てしまった私が照れるほど仲睦まじく寄り添うカップルだったり。
お仕事帰りなのか、それともまだ仕事中なのか、缶コーヒーを片手に空を見上げるスーツ姿のおじさんだったり。
やっぱり、ここじゃなかったのかなぁ。
さっきまで駆け続けた足が重みを増して、少し休もうかとすぐ脇にある階段へ向かうと、階段を降り切った先に人影を見つけてハッとした。
違う・・・今度はカップルでもおじさんでもない。
どうしてその組み合わせでいるのか分からないけど、あの後ろ姿は・・・絶対、そうだ。
そう確信すると休もうと思っていた足はまた前に進み出し階段を駆け下り、ふたつ並んだ後ろ姿へと駆け寄った。
『よかった・・・・・・ここにいた・・・』
駆け寄ったままの勢いで息も切らせながら声を掛ければ、2つの後ろ姿は同時に振り返り、私を見て驚いた。