第17章 見えない未来
❁❁❁ 天side ❁❁❁
最近、楽の様子がどこか不自然だと思っていた。
歌うことは好きか?、とか。
TRIGGERは・・・好きか?、とか。
今までボクにそんな事をわざわざ聞いたりしなかったのに、なぜ今頃?とも思ってた。
けど、それは楽があの歌の事を知ってしまって。
ボクや龍に話すまで、幾つかの葛藤があったからだったんだ。
社長にボクたちが呼ばれてあの曲を渡された時、いつものTRIGGERらしくない曲に疑問はあった。
音楽プロデューサーにそれを問えば、明らかな動揺を隠しながらも自分が作った曲だと言った。
曲を聞き込めば聞き込むほどTRIGGERらしくない曲に、じゃあ誰だったらこの曲が似合うのか。
TRIGGERとは違う、フレッシュさを全面に出している曲調や歌詞。
それを考えた時、真っ先に浮かんだのは元気いっぱいに笑う、陸の顔だった。
だからボクは、ひとつの仮説を立てた。
これは・・・アイドリッシュセブンの曲なんじゃないか、と。
それでもその曲が好きだと言う楽や龍に、その事を言えず、リリースする為のPV撮りも進みTRIGGERの曲として発表された。
もし、あの曲がアイドリッシュセブンの物だったとしたら・・・それを奪ってしまう形になるTRIGGERを、陸は恨むだろうか。
悲しげに俯くRe:valeの顔がチラつきながらも、これもビジネスだと思い込み、割り切って、ボクは事実を見て見ぬフリをした。
その後アイドリッシュセブンが既存の曲でデビューして。
あの日、アイドリッシュセブンのマネージャーがTRIGGERの楽屋に来た時に僕が投げた質問に顔色を変えた彼女の反応を見て、仮説が確信へと変わったんだ。
アイドリッシュセブンの曲を、TRIGGERが歌ってしまった事を。
TRIGGERの曲として発表してしまえば、手違いだったと理由をつけて、彼らに返す事も出来ない。
だからアイドリッシュセブンは、あの曲を公の場で歌う事は出来なくなってしまうだろう・・・そう思っていた矢先に、彼らはあの曲を公の場で歌う事があった。
そう・・・サウンドシッブの、ステージの上で。
ドタキャンしてしまった、TRIGGERの代理として。
ボクたちTRIGGERの、ファンと一緒に・・・彼らは歌った。
ステージに立つ以上、ファンを悲しませる事は許されない。