第17章 見えない未来
「私あのルージュもう買ったんだー」
「そうなの?!え、もしかしていまつけてるやつ?」
「Re:valeに勧められるとオレも買っちゃうかなとか思うよなぁ」
「バーカ!まだプレゼントする相手もいないだろっての!」
同じモニターを見た人達が小さく騒ぎながら私の横を通り過ぎて行くのを感じながら、そう言えば・・・と思い出す。
あの日。
どこにも行き場のない気持ちを抱えた私が、夢を追いかけるのを諦めかけた時。
今みたいにRe:valeのCMがあのモニターから流れてて。
キラキラとした音楽と、眩しく輝く光の中に立つ千と百ちゃんを見た。
未来がない自分と、これから先もずっと輝くRe:valeを比べながら・・・星が輝く空を見上げて、泣けた。
未来が見えなくなったみんなも・・・同じように星を見上げただろうか。
・・・違うか。
あの時の私はひとりだったけど、アイドリッシュセブンはひとりじゃない。
だからこそ、ミュージックフェスタで一織さんがミスった時も励ましあって・・・ミューフェス・・・?
そう言えば私は番組が終わるまで知らなかったけど、翌日に紡さんから聞いた話だと一織さんは出番の後に居なくなってて、みんなで探して。
三月さんが心当たりの居場所があるって探しに行った・・・とか。
もしかしたら、そこに?
・・・行ってみよう。
本当にそこにみんながいるか分からないけど、でも、いるかいないかは行ってみないと分からないから。
現在地からその場所への距離を考えて、ひとまず大通りに出てタクシーを拾おうかと思った・・・けど。
あぁ・・・財布、寮に置いてきちゃった。
仕方ない、走って行こう。
ここまで走り続けて棒になりかけてる足にもう少し頑張ってと見つめて、大きく深呼吸をする。
『よし、行こう』
誰に言うでもなく呟いて、私はまたひとり駆け出した。