第17章 見えない未来
まさか、みんなで揃って最後の晩餐・・・だった、とか?
ドクンと胸が大きくなって、焦燥感に襲われ閉めたばかりの冷蔵庫の扉を開け中をもう一度覗いて、中にある物をひとつずつ見ては頷いて行く。
大丈夫・・・三月さんが下拵えした、一織さんと四葉さんのお弁当のおかずがある。
それからきっと、明日使うんだろう食材もしまってある。
開けたばかりの牛乳パックに、卵もたくさん並んでる。
それに・・・四葉さんの名前が書いてある王様プリンも、ある。
はぁ・・・と安堵の息を吐いて、静かに冷蔵庫の扉を閉めながらヘナヘナと座り込み苦笑する。
私、なんていう確認してるんだろ。
だけど、いまこの寮に誰もいないって事は変わりない。
事務所には紡さんもいなかった。
それは単に紡さんが仕事を終えて帰宅したって事なのかも知れないけど、昨日のあの場には紡さんもいたんだから、万理のように本日の業務は終了しました!帰りまーす!なんて感じにはならないだろうし。
チラ、と壁に掛けられた時計を見て、よし・・・と立ち上がる。
探しに行ってみよう。
もしかしたらみんなで食後の散歩にとか、三月さんがスーパーでおひとり様1点の商品がとか言ってその辺を歩いているのかも知れない。
寮内に誰も見当たらない心細さを押し込めるように、自分でもよく分からない理由をつけて寂しさを閉じ込める。
足早に部屋に戻りパーカーを来てスマホをポケットに押し込み、入って来たばかりの玄関を駆け出した。
ここにもいない、か・・・本当にどこに行ったんだろう。
自分が知る限りのスーパーやコンビニ、それから三月さんがよく立ち寄るドラッグストアを覗いては、探している相手がいないことを確認して、また違うお店へと足を向けてを繰り返し・・・もう思い当たるところがないなと、足を止めれば。
〝 ドキドキのフレッシュデートにはみずみずしさアップのこのカラー!きっと楽しい1日を過ごせるはず! オレのオススメカラーは3種類・・・君は、どのカラーを選ぶ? 〟
〝 甘く艷めくデートなら、マットなカラーで魅惑的に。素敵な夜は、今、ここから始まる。だからその唇・・・僕に預けて?〟
これ・・・あの時、私が降板したCMだ・・・
そう思いながら、大きなモニターパネルを見つめ続ける。