第17章 見えない未来
事務所を出て、寮までの道を足取り重く歩く。
社長・・・本当に解散させるつもりなのかも知れない。
じゃなきゃ、あんな風には言わないだろうし。
小「僕だっていつでも仏ではないんだよ」
社長がそう言った意味も、ちゃんと理解してるつもりはある。
それは逆を言えば、八乙女社長がいつも鬼ではないという事だから。
八乙女社長の場合は鬼の方が大半かもだけど、それでも優しいと思える所は私にはたくさんあった。
人は誰でもその両面をいつも持っていて、鬼に変わるか、仏でいるかは状況によって変わるから。
今の小鳥遊社長は、仏ではない・・・ってことか・・・
寮の玄関を開ければ、いつもならそこかしこに脱ぎっぱなしの四葉さんの靴も今日は見当たらない。
また二階堂さんとコンビニへお菓子を買いに出かけているんだろうか。
それならそれで、顔を合わせないから・・・まだ少し気が楽かな。
って、ダメダメそんなんじゃ!
事情や状況がどうであれ、四葉さんを叩いてしまったのはいけない事だった。
それこそ、謝るなら早く・・・でも、許して貰えるんだろうか・・・
未だにピリピリと痺れる感覚が忘れられない手を見つめ、小さく息を吐く。
未来が見えなくなってしまったみんなに、どんな顔をすればいいんだろう。
さっき社長にも随分とお願いをしたけど、聞き入れて貰えはしなかった。
思い足取りのままリビングの前まで来て、その静けさに疑問を覚えてドアを開ける。
『誰もいない・・・なんで?』
いつもならキッチンには三月さんや逢坂さんがいて。
ソファーには四葉さんが二階堂さんがいて。
なのに、今は誰もいない。
仕事・・・は入ってなかったはずだから、全員が外出中っていうのも考えにくい。
鞄をテーブルに置いてキッチンに入れば、早い夕飯を食べたんだろうか、メンバーの食器が洗われて水切りカゴに伏せてある。
その近くには、盛り付けられた私の分の夕飯が置いてあり、フワリとラップをかけられている。
冷蔵庫を開けてみれば、取り分けられたサラダやデザートも同じようにラップをかけられ、付箋に三月さんの字で愛聖と書かれて貼り付けてある。
『みんな・・・どこに行ったんだろう』
アイドリッシュセブンの仕事の時はよくある事なのに、どうしてこんなにも不安になるんだろう。