第17章 見えない未来
チラ、と視線だけで社長を見ると、ブラインドの隙間から空を見て、明日も天気かな?・・・なんて独り言を呟いている。
言うなら、今しかない。
もし本当に全てを解散させてと考えているなら、時間もない。
万理からのメモをギュッと握り締めて、静かにひとつ深呼吸をした。
『社長、私のスケジュール確認の前に聞いて欲しい事があります・・・いいでしょうか?』
小「話?それはどんな?」
窓から離れて私の前に座る社長に正面から見据えられ、言葉が詰まる。
『それ、は・・・その・・・』
小「愛聖さんが僕に話したいという内容が、僕に取って有益な事ならば喜んで話を聞こう。だけど、もしそうじゃな、」
『絶対損なんてしません!!』
思わず社長の言葉を遮るように大きな声を出してしまって自分でも驚きながら、それでも話を聞いて欲しくて前のめりになる。
小「分かった、話を聞こう。ひとまず座りなさい」
『・・・はい』
そこからはもう勢いをつけたまま社長に自分の思ってることを包み隠すことなく話し続けた。
その間、社長は特に反論や意見することもなく、ただずっと私が話す事を聞いていて。
つけた勢いが落ち着いてくる頃には、喉もカラカラになるほど時間も経っていた。
『以上が、私の思っている気持ち全てです』
最後の言葉を伝え、深く息を吸って静かに吐き出す。
小「うん・・・そうだね、確かにキミの言う通りだとすれば、昨日の僕の判断は早過ぎるのかも知れない。だけど、じゃあ彼らはどうだろう。あの子たちはいま、何を考え、何を思って自分を見つめ直していると思う?」
『それは・・・私には・・・』
小「光り輝く世界を夢見て、眩しさの頂点にある舞台に手を伸ばして。そこに辿り着くために訪れる苦難を乗り越える事で、ようやく夢を掴める場所まで近付いた。なのに彼らは、その夢に手が届きそうだと言うのに喜べなかった。それはもう、夢だったものが夢じゃなくなってしまったのと同じなんだよ」
淡々と話す社長の言葉を聞いていると、納得してしまいそうな自分がいることに、違うと大きく首を振る。
『社長・・・私は、そうだとは思いません。夢が夢じゃなくなったと言うのは違うと思います。もし、本当にみんな夢を追いかけるのをやめてしまったとしたら、これから先の事をあんなに悩んで、失敗を悔やんで泣いたりしません』