第17章 見えない未来
小「愛聖さん、お疲れ様でした。千くんもスタッフも仕上がりが楽しみだって言ってくれてたよ?もちろん楽しみなのは僕もだけどね」
レコーディングを終えて事務所に戻り、明日からのスケジュールを確認する為に社長室へと案内される。
万「いよいよCD発売かぁ・・・発売日が確定したら俺も忘れずに予約しないとな」
『何言ってるんだか・・・』
そう返しながらも、万理の部屋に置いてあるRe:valeのリリース作品や私の出演した映画やドラマのBlu-rayの数々を思い浮かべては、万理ならやりかねない・・・と胸の奥でこっそりと笑う。
小「キミはうちの稼ぎ頭になって貰わないとだから、スケジュールどんどん埋めて行こう。休みなんて上げられないかも知れなくなるくらい、売り込むし、仕事は受けるから覚悟してね?」
にこやかに笑いながら言う社長に曖昧な返事をして、勧められるままにソファーへと腰を沈める。
稼ぎ頭になって貰わないと・・・その言葉が、悲しく心に刺さる。
社長は本当に、アイドリッシュセブンもMEZZO"も手放してしまうのだろうか。
さり気なく社長室の壁を見れば、まだそこには彼らのポスターが貼ったままで、それは昨日の今日だからと言えばそうなのかもだけど・・・やっぱりあのまま終わりになってしまうのは私も嫌だ。
だけど、どうしたら・・・
そう考えながら、いつの間にかポスターを見つめ続けていた私の手を万理が軽く握り、苦笑を見せながらコーヒーを入れてくると言って部屋を出た。
今の、なんだったんだろう。
あんな風に万理が手を握ってとか、いつもなら頭をぽんっ・・・・・・あれ?
手の中には、さっきまでなかった違和感がある。
疑問に思いながらそっと手を開けば、そこには小さく折り畳まれたメモがあって。
何が、書いてあるんだろう・・・そう思いながらそっと開いてみると、そこにはやはり万理の字で。
ちゃんと話せば、愛聖の思いは社長に伝わるはずだよ
そう、書かれていた。
ちゃんと話せば・・・でも、なんて?
どう、切り出せばいい?
あの時の社長はいつもとは全然違くて、まるで八乙女社長のような厳しい表情をしていた。
何を言ってるんだと怒られるかも知れない。
だけど、それを恐れて何も言わないのは・・・もっと違う気がする。