第17章 見えない未来
一「あの人は自分では私たちの後輩だと言ってますが、実際は大先輩で・・・いろんな事情があって八乙女プロダクションから移籍して来た。だから、今の私たちのような状況の時、同じ気持ちだったのかな?と」
オレたちのような状況って言っても、愛聖の場合はもっと・・・なんて言うか、深いぞ?
う~ん・・・と小さく言いながら愛聖が来た時の事を思い出して眼鏡を指先で触れる。
「愛聖の場合はオレたちと少し違うけど・・・でも、ドン底まで落ちて苦しんだのは確かだろうな。なんせ話を聞かされた時、万理さんに再会しなければ今の自分はこの世にいなかったかもとか言ってたし。でも、なんでいま愛聖が?」
一「昨日の四葉さんとのやり取りを思い出していて、顔を上げて前を見なければならないのは四葉さんだけではなく、私たちもだと思って・・・あの人は四葉さんに角砂糖にハチミツをかけるほどの甘さを見せていますが、昨日は・・・違ったから」
いやいや、角砂糖にハチミツかけるって相当な甘さ・・・でも、ないか?
Re:valeのおふたりさんは、愛聖に角砂糖にハチミツとメイプルシロップを左右からドバドバかけるほど甘くしてるし。
万理さんに至ってはそれ以上って感じもするけど。
「まぁ、とりあえずだ。イチ・・・オレたちだけで考えてても何も始まらない。何をするにも、メンバー全員で話し合おうって最初に決めただろ?だから、まずはアイツらと、それからマネージャーも入れて、これからを考えるのが最優先だ。このまま終わるのか、それとも、まだのたうち回るチャンスがあるのかをな」
一「そうですね、二階堂さんの言う通りです。そうと決まればまずは全員揃えなければなりませんね」
さっきとは違ってイチらしい顔を見せて、そもそも他のメンバーはどこにいるんでしょうと話し出す姿に、オレはこっそり笑う。
アイツらはもしかしたらあの場所に・・・いや、それは確実ではないけど、行ってみる価値はあるだろ。
そう胸の中で呟いてからイチを促し、あてのない散歩から、目的地のある散歩へと切り替えた。