第17章 見えない未来
❁❁❁ 大和 side ❁❁❁
社長がオレたちに解散だと言った時、その場にいた誰もが自分の耳を疑った。
まぁもっともその前の、タマに対する愛聖の言動にも驚いたばかりだったから、驚きの連続コンボって感じで、言葉さえ出なかったってやつで。
昨日の今日で何がどう変わる訳でもないけど、朝からみんな暗い顔して過ごしてた。
中でも、イチは特に。
タマはあれからしばらくの間ソウがついてたから、その場は頼んだけど、その後タマとは話をする事は出来た。
いつもより早めの夕飯の後、気が付いたらタマは出掛けていて部屋にはいなくて。
リクも、ミツも、ソウも・・・あのナギでさえ、今日は部屋でアニメを見ることなく、どこかへ出掛けて行ったようだし。
部屋にひとりでいたイチに声を掛けて、散歩に付き合えと誘ったものの何を話そうかと考えていれば、イチからいろいろ話し始めて・・・
一「この仕事が・・・アイドリッシュセブンが・・・好きになったんです」
「・・・これほどお前らの事も、歌うことも好きになるだなんてな・・・なのに、楽しめない気持ちはどうしてだろう」
オレが芸能界に入りたかった理由はただひとつ・・・親父への復習だった。
だからマネージャーがオーディションをするって言った時、そんな理由を抱えてるオレが本当に頑張ってるこいつらの中に、ましてやオーディションを受けるだなんて・・・そんなの、違うって思って。
だから、一抜けしようとしたのに。
いつの間にか、みんなと歌って踊って、嬉しい事は分かちあって、悲しい事もみんなで胸を痛めて今日までやって来た。
それはこれから先もずっとそうなんたって勝手に思い込んでたのかも知れないけど、だけど・・・オレは、オレたちはずっと一緒にアイドリッシュセブンとして活動して行くんだって、思ってたのに。
社長から言われた解散という言葉で、いとも簡単に砕けそうになってる。
嬉しいことが喜べない・・・どうして、そんな気持ちのまま前に進めなくなったんだろう。
けど、このままじゃダメだってのだけは分かってる。
一「話の引き合いに出すのは違うかもしれませんが・・・佐伯さんにも、こういう時があったんでしょうか・・・」
「えっと・・・愛聖?」
隣を歩くイチが、少し間を開けて愛聖の名前を出した事に、僅かに戸惑う。