第17章 見えない未来
❁❁❁ 一織 side ❁❁❁
「アイドルになる夢は兄さんの夢で、私はその兄さんの夢が叶えばいいなって思ってて。だから社長から声を掛けられた時、兄さんが一緒なら・・・と」
二階堂さんに散歩にでも出ようと誘われて、どこに行くでもなく歩き、手持ち無沙汰な空間を埋める訳ではないけれど、自分たちが事務所に入るきっかけになった話をする。
大「あぁ、前にもそう言ってたっけ」
「えぇ。私がいる事で兄さんの夢が叶うのなら、それでいい。自分自信が興味がない世界でも、兄さんが頑張る姿を近くで見れるならいいとさえ。だけど、アイドリッシュセブンのメンバーとして活動しながらマネージメントを協力しているうちに、この仕事が・・・アイドリッシュセブンが・・・好きになったんです」
大「そうだな・・・オレも、その辺はイチと同じだよ。あの時マネージャーからオーディションをするって聞いて帰ろうとした時には、考えもしなかったよ。これほどお前らの事も、歌うことも好きになるだなんてな・・・なのに、楽しめない気持ちはどうしてだろう」
二階堂さんは普段はあまり本心を見せない事が多いのに、こうやって今その気持ちを言葉に出すと言うことは、私たちと出会ったばかりの頃より遥かにずっと、本当の自分を見せてくれている感じがして。
それは何となく、どこか擽ったいような気持ちにさせられる。
男ばかりの生活の場に突然佐伯さんが加わることになった時も、女の人が一緒に住むならいろいろ優先する事もあるよね!と騒いでいた七瀬さんに、受け入れる側が男だとか女だとか一線引いてたら、いつまで経っても仲間にはなれないだろ?なんて言って、みんなと同じ扱いにするようにと助言していたのも二階堂さんだった。
素直に伝える事は私には難しいですが、二階堂さん・・・私はそんなあなたを、少し尊敬している部分もあるんです。
伝えたら伝えたで茶化されてしまいそうなので、絶対・・・言いませんけどね。
そんな思いを秘めながら、数歩先を行く二階堂さんの隣に並ぶべく、足を早めた。