第17章 見えない未来
あんな風に泣く一織は、オレだって初めて見たよ。
一織は子供の頃からいつも冷静に物事を見ていて、何かあって落ち込むことはあったかも知れないけど、泣くことなんてなかった。
だからこそ、そんな一織を目の当たりにして・・・胸が痛かった。
壮「あの時の一織くんの失敗があって、僕と環くんがMEZZO"として先にデビューする事になって辛かったけど・・・でも、みんながいれば何とかなるって・・・信じてた・・・」
「あぁ・・・そうだな」
あん時のオレは、壮五と環だけが先にデビューするって決まって、なんでだよ!ってどこにもぶつけられない気持ちに潰それそうになって。
だけど・・・頑張る2人を見て、早くオレたち全員でアイドリッシュセブンとしてデビューしたいって、改めて思ったんだ。
ナ「あの頃に、戻れないでしょうか・・・ワタシたちの嬉しい事、楽しい気持ち、大切なもの・・・変わってしまいましたか・・・?」
オレたちの嬉しいこと。
それは、オレたちが歌う事でファンのみんなが喜ぶ事。
オレたちの楽しい気持ち。
それは、オレたち全員で歌い続ける事。
オレたちの・・・大切なもの。
それは・・・
そんなの今更考えなくても・・・変わるわけねぇじゃん。
「ナギ・・・壮五・・・愛聖が環に言った言葉、覚えてるか?」
小さい体で、環を力いっぱいに引っ張り立たせて言った・・・あの言葉。
ナ「YES・・・ちゃんと、覚えてマス」
壮「僕も覚えてるよ。あの言葉はいつも・・・愛聖さんが自分に向けて言ってる言葉だから」
壮五の言葉に、オレも頷く。
『しっかりしなさい四葉環!顔を上げて前を見なさい!』
あれは愛聖が自分を鼓舞する時に、自分を言い聞かせるように言ってるやつだ。
「オレたちも顔上げて・・・前を見ないとだな」
そう言ったオレに、ナギと壮五も静かに頷いた。