第17章 見えない未来
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
もう、こんな時間か・・・
辺りが暗くなって来たのを理由にスマホの時間を見て、散歩に出たつもりが随分と遠くまで来てしまったんだなと、またスマホをポケットに押し込んでは、その重い足でまた歩き出す。
昨日はいろんな事があって、みんな落ち込んだまま自分たちの部屋に戻った。
壮五さんだけは、いつまでもその場を動こうとしない環に寄り添って最後までいたみたいだけど。
オレも環の事が気になったけど、壮五さんが自分がついてるから大丈夫だって言ってみんなに部屋に帰るように言ってて。
いつも環を一織から庇う事が多かった愛聖さんにあんな風に怒られて、ショックだったんだろうな。
オレだって、いつもにこにこ笑ってる愛聖さんが環に手を上げてまで怒る姿に驚いたし。
それは、他のみんなも同じだったけどさ。
でも、心配なのは愛聖さんもだよ。
いつも大げさなくらいに甘える環に嬉しそうにしてて、弟が出来たみたいだからとか、大きな犬みたいに甘えてくれるのが楽しいとか言ってたのに、そんな環を・・・叩いてしまった。
自分のことはいつも後回しにしてでもオレたちを応援してくれてたのに、こんな事になって。
「解散、か・・・」
昨日言われた言葉が、不意に口から零れ落ちる。
社長・・・本気なのかな・・・
でも、オレたちが見たことないような・・・怖い顔してた。
本気、なんだろうな・・・
マネージャーも、愛聖さんも、悲しい顔してた。
ファンの子たちだって、アイドリッシュセブンが急に解散だなんて知ったら悲しむと思う。
それなのにどうして、新人賞候補に選ばれたって聞いたのに・・・嬉しくないんだろう。
やっぱり社長の言う通り、夢が夢じゃなくなっちゃったのかな・・・
俯いていた顔を上げると目の前には大きな建物が見えて、それが伝説のアイドルでもあったゼロが最後にステージに立った場所だと分かるにはそう時間もかからなかった。
ゼロも、こんな気持ちになったりしたのかな。
歌うことが、楽しいと思えなくなった?
みんなの喜ぶ顔を見るのが、嬉しくなくなっちゃった?
・・・ゼロは・・・どうして消えてしまったんだろう。
それは、ゼロじゃなきゃ分からない気持ちだったのかも知れないけど。