第17章 見えない未来
❁❁❁ 千side ❁❁❁
「佐伯さんなら、さっき百さんが屋上へ連れて行くって言ってましたよ」
「そう・・・ありがとう」
冷静になってから、さっきはキツく言い過ぎたなと思って、モモと一緒にいるだろう愛聖を探せば、スタッフの1人から恐らくいるだろう居場所を教えられる。
屋上か・・・モモの事だから、風に当たって気分転換でもしようと連れ出したんだろう。
今日はうさぎのおじさんは愛聖を僕たちに引き渡すと、事務所へ戻ってしまったから愛聖を外へ連れ出すなんて出来ないから。
屋上へ向かう途中の自販機で甘いカフェオレを2本買い階段を上がりドアに手を掛ければ、向こう側から2人の話し声が聞こえて来て、扉を押し開く手を止める。
『四葉さんにはもう一度・・・何度でも、許して貰えるまで謝るから』
四葉・・・環くんに許して貰えるまで謝る?
・・・なんの話をしてるんだ?
百「手を上げてしまった事は確かにダメだったかもだけど、環もちゃんと分かってくれるよ。だからさ、元気だして?」
手を、上げた?
環くんとケンカでもしたのか?
何となく声を掛けそびれて、その場に腰を下ろす。
あの、まるで人懐っこい大型犬のような環くんが愛聖とケンカ?
それも、愛聖はそんな環くんに手を上げたって。
いったい何があったんだ?
『話を聞いてくれたのが百ちゃんで良かった・・・ありがとう』
百「そういう時は、百ちゃん大好き!でしょ?」
・・・なんでそうなる。
『あはは!そうかも・・・じゃあ、百ちゃんありがとう・・・大好き』
・・・言ってるし。
全く、聞いてられないなとばかりに苦笑しながら下ろしたばかりの腰を上げ、屋上へと続くその扉を押し開く。
「愛聖、モモが大好きなのはいいけど・・・もちろん1番は僕、だよね?」
『・・・千?!あの、さっきは・・・その、ごめんなさい』
「それはもういいって、僕もつい言い過ぎた。それより、僕の質問の答えは?モモと僕・・・どっちが大好きなの?」
わざとらしく愛聖の顔を覗き込んで、さぁ、答えてご覧?と笑う。
『どっちが、って・・・さっきと質問違うし』
「バレた?」
『さすがにバレバレだよ。でも、今日の所は百ちゃんにしとこうかな?』