第17章 見えない未来
それでもなかなか動こうとしないマリーの肩を抱いてブースの外へ出し、そのまま屋上へと続く階段を一緒に上がり外に出る。
喧騒から離れた場所に建てられているここは、屋上へ出れば心洗われるような風が吹いている。
オレはまだその瞳を濡らしたままのマリーを柵の所まで連れて行き、ちょっと待ってて?と言って控え室へと走っては自分の鞄からももりんを2本掴むとまた屋上へと駆け戻った。
「はい、これ飲んで!」
『ももりん・・・?』
「そ!オレもユキに怒られたりした時これ飲んで元気出すから、マリーにもあげちゃう!」
『・・・ありがとう』
「そこは、百ちゃん優しい!イケメン!大好き!・・・でしょ!」
涙さえ止まってるものの、表情は暗いままのマリーにおどけてみても、無理やり微かに笑うだけで。
なんだか元気がなさそうなのは、マリーがここに来てから気付いてたけど・・・これは相当、重症っぼいや。
何があったんだろうかと考えながら屋上の柵にもたれ掛かり、遠くに見える街並みを眺めては、ももりんを飲む。
そっと隣を見ると、同じように遠くを見ているマリーが吐きかけたため息を飲み込んでは、瞬きを繰り返していた。
「マリー・・・もし、話したくない事なら無理に聞こうとは思わないけど、オレが聞いてあげられる事な・・・」
なんで?!
なんでまた泣き出した?!
ど、どど、どうするオレ!
こんな時ユキだったら迷わず抱きしめて・・・いや、オレがいくらユキのマネをしても、それはユキじゃない。
そんな事はとっくに分かってるのに、いざと言う時どうしてもユキなら、と思うオレがいる。
オレは、どうしたってユキにはなれないのに。
飲みかけのペットボトルを足元に置き、伸ばした両腕でマリーの頭を撫でた。
「マリー。オレで良ければ、」
相談に乗るよ?って言おうとしたら。
『百ちゃん、私・・・四葉さんの事を・・・』
「四葉さ・・・あぁ、環か」
マリーの口から出る名前にその姿を思い浮かべ、環の事がどうした?と返して、その後に何も言わないマリーに、ふと、思考が止まる。
そういや、普段からマリーと環って仲良しだよな?
実は環の事が、泣くほど・・・“ 好き ” だとか言われたらどうするオレ?!