第17章 見えない未来
確かに下岡さんが言うように、デビューした女優や俳優で見かけなくなってしまった人がいる。
スキャンダルに押し潰されてしまった人や、事務所そのものがなくなってしまったりというのは稀であっても、忽然と存在がなくなってしまうのはいつの頃も、ある。
私だってその中のひとりになろうとしてたと言えば、そうだったし。
下「アイドリッシュセブンの彼らは、Re:valeの様な大先輩や、TRIGGERの様な強敵なライバルといい上下関係になってる。それは佐伯ちゃんの存在自体があの子たちに程よい距離を保つ軸になってるってことだと思うけど?」
そこまで言って下岡さんは、まだ香りの立つカップに口を付けた。
確かにRe:valeに関しては・・・というより、千は、になるけど。
自分と相性が合わないと思えばどう積極的に近付こうとしても、千自身が受け入れようとしない。
それに関しては円滑剤になってるのかも知れない。
千・・・興味が薄い相手には、滅多に自分から他の人に寄り添うなんてないから。
私も千と出会ったばかりの頃は、そりゃもうツンツンツンツンしてて、仲良くなるまでは万理が間に入ってくれての・・・今だし。
TRIGGERは、七瀬さんと天の関係性がある事も際どいラインを保ちながら良くしてくれてるのだとも思う。。
楽は・・・まぁ、ともかくとして。
龍は表向きは超絶セクシーで活動してるけど、本来の龍は面倒見がいいお兄さんタイプだし。
下「今回の環くんの件は残念だったけど、僕はあの子たちは好きだし、応援もしてる。だからこそ彼には然るべき場所、然るべき人にきちんと謝罪をして、また前に進んで欲しいと思ってるよ。先の見方がまだ手探りで分からない彼らにその道筋を教えてあげる事が出来るのも、佐伯ちゃんが出来ることのひとつなんじゃないかな?」
『そう、ですね・・・』
四葉さんの事を、ちゃんと分かってくれている人がいる。
それだけでも、まだ未来が閉ざされた訳じゃないと・・・仄かに温かさが残るカップを手に取り、その揺れる波紋へと視線を落とした。