第17章 見えない未来
『私は、ご存知のように仕事中に母さんの容態が急変して、最後の別れはまともに出来ませんでした。その事について何を書かれようと、何を言われようと構わない・・・事実、ですから。だけど、あの子の場合は違うじゃないですか・・・まだ未成年で、高校生なのに。それを本人の同意確認もなく、きちんとした裏取りや調査もなく、いきなり四葉さんのお父さんを連れて来るのは、私は・・・違うんじゃないかと思います』
四葉さんがアイドルになろうと思ったいちばんの理由は、妹を探す為だって言ってた。
だから早くデビューしたくて、有名になりたくて、頑張ってた。
事情があって私が先に再デビューという形で仕事を始めた時も、自分より後から来たのに!って怒ったりもして。
四葉さんとは、なにかといろいろあったけど・・・それでも、いつか妹が見つかったら、マリーに紹介する!そしたら一緒に遊ぼうぜ!って話した時の、あの四葉さんのキラキラとした笑顔が忘れられない。
『私は、四葉さんと同じ事務所だから擁護したい訳じゃないんです。ただ、今回の件は片方だけの理由を取り上げて制裁するのはおかしいって、思ったからで。なんか・・・愚痴こぼしみたいな事をしてすみませんでした・・・』
胸につかえていた物を吐き出すように言って、まだモヤモヤする気持ちはあるけど、最後には下岡さんにそう言って頭を下げた。
下「実はね、佐伯ちゃん。僕もなにかおかしいって感じたから、馴染みの番組スタッフに探りを入れたんだよ」
その言葉を聞いて、いま下げたばかりの頭を思いっきり上げる。
下「環くんとプロデューサーのやり取りは小鳥遊さんも既に知っていると思うけど、その後で番組制作会議をした時にプロデューサーから父親の存在を教えられたそうだよ。もちろん妹さんの事も探したけれど、里親に引き取られて施設を出た後の足取りは今ひとつ掴めなかった。けど、その代わりにプロデューサーが独自に調査していた父親が見つかった。環くんが父親を恨んでいる事もプロデューサーは知っていたそうだ」
『それなのに、どうして・・・』
四葉さんと四葉さんのお父さんとの確執を知っていながら、どうしてそれでも2人を合わせようとしたんだろう。
どうなるかなんて、その時点で分かってるはずなのに・・・