第17章 見えない未来
私の話を聞きながら楽しそうな顔を見せる下岡さんに、話を途切らせ、どうかしたのか?と聞けば。
下「なるほど・・・たまにしか使ったことがない食堂。偶然にも居合わせた若い男女。お互いの素性を知らずに惹かれ合う2人は、やがて恋に落、」
『落ちませんよ!そもそも私も岡崎さんもお互いの事をそれなりに知ってますし。もう・・・なんだか今日はこんな話題ばっかり・・・岡崎さんは誠実そうでお仕事も真面目にしてらっしゃいますけど、今のところそういう対象にはなりません』
またもこの話題か・・・と大きくため息を吐けば、下岡さんがゲラゲラと笑い出す。
下「ここまでハッキリ言われちゃう彼も可哀想だけどね~。でもさ、今ので息抜き出来たんじゃない?」
『息抜き?』
下「そう、息抜き。さっきここへ来た時の佐伯ちゃんは、今にも死にそうなほど暗い顔だったし」
『それは四葉さんのことがあったのに私が呼ばれ
・・・』
思わずそう言いかけて、四葉さんの名前を出してしまった事で口を閉ざす。
下「環くんの、事ね・・・確かに彼は、大変な事をしてしまったよ。彼がしてしまった事は、土下座して頭を下げれば簡単に許されるという事ではない。この世界は、そういう世界でもある。それは僕が言わなくても、佐伯ちゃんだって分かってるよね?」
『・・・はい。でも今回の事に関して私は、四葉さんだけが悪いとは思えないんです。いえ・・・思いたくないと・・・』
小「愛聖さん、それは今は・・・」
『分かってます。分かっていて、下岡さんに聞いて欲しいんです』
岡崎さんの話から四葉さんの事にベクトルの方向が変わったのを、社長がさり気なく止めようとした。
でも、私は自分の中で感じていた考えを吐き出したくて・・・下岡さんへとまた顔を戻す。
『私には番組制作側の意図はちゃんとは分かりません。だけど四葉さんの話を聞く限りでは、彼だけが悪いとはどうしても思えないんです。私も四葉さんも、職種は違えど番組側からは依頼があって使われる身です。けど、だからと言って何をされても笑って許せる訳でもないんです・・・私はともかくとして、あの子の場合は、家族に関しては・・・特に・・・』
妹に会いたい四葉さんの気持ちを、番組制作側が視聴率欲しさに利用した・・・そうとしか思えなかった。