第17章 見えない未来
紡「社長・・・あの、」
小「ちゃんとした謝罪は後日改めてという事になったよ。今日はあちら側もいろいろと忙しいからと言われてね・・・とりあえずここにいても仕方がないから、みんな帰る支度をして紡くんと先に帰りなさい」
・・・先に?
『社長はまだ帰らないんですか?』
社長の言葉に疑問を覚えて、小さく聞いてみる。
小「少し、寄るところが出来てね。だからこの後、時間貰えるかな?詳しくは向かいながら話すよ」
向かいながら?
急に仕事が入ったとかじゃなさそうだし・・・どこに行くんだろう。
みんなをエレベーターまで見送ってから、社長が私に実はね・・・と話し出す。
小「さっき番組関係者の所へ謝罪に行った後、ミスター下岡さんに会ったんだよ。元々彼にも謝罪するつもりではいたから、そこで愛聖さんの同行をしていて同じ局内にいたのに目が届かず申し訳ありませんでしたって頭を下げたら・・・」
『さ、下げたら?』
途中で言葉を切る社長に一抹の不安を感じると、社長は、さて、向かおうかと私の背中に手を当てて足を進め始める。
小「同じ局内で仕事していたのにキミの顔を見ないで帰るのは勿体ない!なんて言われて、この後のスケジュールは入ってなかったから後ほどお連れしますって」
『・・・そう、なんです、か・・・下岡さんが・・・』
同じ番組で仕事をする時は必ず楽屋挨拶には伺っていたけど、今回は別仕事だったから行かなかったんだよね。
だから社長が打ち合わせに呼ばれた時も、私が一緒に行くのもおかしいと思って、別行動だったんだけど・・・
『あんな事があった後なのに、どんな顔して行ったらいいんだろう』
思わず零した言葉に、社長が振り返る。
小「僕も、心の中ではそう思ってたよ。連れて行くと行ってしまったけど、愛聖さんの居心地が良くなかったらどうしようかだとか。でもね、ミスター下岡さんが余計な心配なんてせずに連れて来て欲しいって。自分と佐伯ちゃんは仲良しだから!・・・って」
『あ・・・もしかしてそれって』
パンケーキ仲間だからって事?
そう思ったのが顔に出ていたのか、社長は私を見て小さく頷きながら微笑んだ。
でも下岡さんがそう言ったのは、多分・・・気を使ってくれたんじゃないか?とも思えるんだけど。