第17章 見えない未来
テレビ局での仕事を終え、楽屋に備え付けてある簡易シャワーを浴びて出ると、私を待つ間にノートパソコンで仕事をしていた社長が顔を上げた。
小「ようやくサッパリって感じかな?」
『えぇ、まぁ・・・でも、バラエティー番組であれほどクリームだらけになったのは初めてだったので、楽しかったです』
小「それならいいけど、でも・・・番宣でもないのにバラエティーにだなんて、良かったの?」
普段はドラマなどの仕事をしてる時にバラエティー番組に番宣でゲスト出演っていうのはあったけど、今回のはそんなしがらみなど何もなく、ただお話があってスケジュールも入ってなかったから出演を受けた。
その事に関して、きっと社長は良かったのか?と聞いているんだろう。
『問題なんてありませんよ?私は女優1本路線じゃなくても、こういったお仕事をしながら幅広い活動をしていこうかな?なんて思ったりしてるんです。クリーム塗れになろうと、小麦粉塗れになろうと、佐伯 愛聖 は・・・佐伯 愛聖 である事に変わりはないんです』
小「八乙女も言ってたね。白は白でしかなく、どんな色に白を入れようともそれは白ではない・・・だったかな?」
『・・・はい』
あの会見の場でおかしな質問ばかり言う記者に対して、八乙女社長がそう言った事を思い出す。
住む場所が変われば空気も変わり、親が変われば育ち方も変わる。
どれだけ環境が変わろうとも、私が私であることに変わりはない。
もっと自分に自信を持って、胸を張って前を見なければ・・・この先をずっと歩き続ける事が出来ないから。
小「それはそうと、さっき愛聖さんがクリーム塗れになってる頃だけど、Re:valeのマネージャーの岡崎くんに会ったから僕からもお礼を言っておいたよ。キミを記者から守ってくれたって聞いてたから」
『お、岡崎さんにお会いしたんですか?』
小「Re:valeの移動で通りかかったようだったけど、お礼を言ったら偶然でも自分がいて役に立てて良かったとか謙遜してはいたけど、僕が側にいない時の出来事だから助かったって、お礼を」
そうだったんですね・・・と相打ちをしながら、ミネラルウォーターのキャップを開けて口を付けた。
社長には、まさかその岡崎さんとの事で、姉鷺さんに妙にからかわれた事は話せなかったけど。