第17章 見えない未来
『姉鷺さん!私はともかく岡崎さんにご迷惑じゃないですか・・・そういうの、私とだとか』
岡「いえ、自分は別に迷惑だなんて思っていませんから」
姉「ほら?本人が耳まで赤くしてそう言ってるんだし、いいんじゃないの?」
耳まで?
姉鷺に言われて岡崎さんを見上げると、同じタイミングで視線をそらされる。
姉「ま、とにかく?」
姉鷺さんがそう言うのと同時に、エレベーターがポーンと音を響かせゆっくりとドアが開く。
姉「恋愛するならバレないようにしなさいよ?」
『だから違うのに!』
そう返す私の声を背中で受けながら、手をヒラヒラとさせて行ってしまった。
岡「なんだかすみません、自分のせいでTRIGGERのマネージャーさんに誤解されてしまって」
アハハ・・・と言いながら岡崎さんが自分の頬を掻く。
『大丈夫です。姉鷺さんは違うと分かってて、わざとあんな風に言ってるだけですか、ら・・・あーっ!』
こちらこそすみませんと言おうと岡崎さんを見て、その胸元のシャツとネクタイにくっきり付いているルージュに声を上げてしまう。
岡「な、なんですか?!」
『お、岡崎さんホントにすみません!あの、それ・・・ごめんなさいっ!』
その部分に指を差せば、岡崎さんはそれを辿って、あぁ、と笑った。
岡「構いませんよ、これくらい大丈夫です」
『そういう訳には・・・あ、そうだ楽屋に行ったら脱いで下さい。クリーニングしてお返ししますから。換えのシャツは・・・私が衣装さんに頼んでご用意しますので』
もしかしたら社長が換えのシャツくらい持ち歩いてるかもとも思ったけど、それだと社長にも迷惑をかけてしまうし、だったら衣装さんに頼めば・・・と案を出す。
岡「大丈夫ですよ?普通に洗濯すれば落ちますし、それになりよりこれは、自分が佐伯さんをお守りした勇者の証です。ね、そう言うとカッコいいでしょう?」
ニコニコと笑いながら言う岡崎さんの言葉が、ふわっと心を通り抜ける。
あ・・・なんか私いま・・・キュンとしちゃった・・・
い・・・いやいやいやいや、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ私!
『あの、じゃあお詫びに今度お茶でもご馳走させて下さい』
岡「お茶ならお詫びなしで、是非ご一緒させて下さい」
そう言って岡崎さんは、またニコニコしながらエレベーターの階表示を見上げた。