第17章 見えない未来
エレベーターに乗り込もうと出したつま先がドアの溝に引っかかり、体の重心が傾いていく。
ヤバっ・・・転ぶ!!
そう思った瞬間、その傾きは伸ばされた腕によって抱き掬われる。
岡「おっ、と・・・危なかったですね」
『す、すみません、ありが』
ありがとうございました、と・・・言おうとして、顔を上げて。
その距離の近さに思わず言葉も、息も止まる。
岡「佐伯さん?・・・あっ、もしかしてどこか痛いところでも?!」
何も言わず黙ったままの私に、岡崎さんが慌て出す。
岡「痛いところはどこですか?!足ですか?!それでも別の場所?!」
私を軸にして岡崎さんがケガはないかと確認をする。
『お、落ち着いて下さい岡崎さん。大丈夫、ケガはしてないし痛いところもありませんから』
岡「本当に?」
『本当です』
岡「良かった・・・」
『え・・・あ、あの・・・』
どれだけ心配していたのか、私になにもないと分かると、岡崎さんが脱力しながらも私を抱きしめるような仕草で息を吐く。
「どうでもいいけどアンタたち?そろそろエレベーターのドア、閉めてくれないかしら?私はいつまでもおかしなラブラブシーンを見届けるほどヒマじゃないのよ」
呆れたように息を吐いた誰かに言われ、自分たちの他に人がいる事に驚いてお互いに慌てながら体を離す。
岡「あなたはTRIGGERの・・・」
『・・・姉鷺さん?!い、いつからいたんですか?!』
ぎこちない動きで振り返れば、エレベーターの壁に寄り掛かる姉鷺さんがいて。
姉「全く・・・ここはテレビ局で、誰もが使う公共のエレベーターよ?シークレットロマンスなら、もっとこっそり上手くやりなさい」
岡「シークレット・・・」
『ロマンス・・・?ち、違います!姉鷺さんの誤解です!』
姉「そうやって慌ててると却って怪しいわよ?」
『だからホントに違うんですって!岡崎さんは私が転びそうになったのを支えてくれただけで、姉鷺さんが考えてるようないかがわしい事はなにも』
動き出すエレベーターの中でわちゃわちゃと言えば、姉鷺さんは急に笑い出す。
姉「知ってるわよ、愛聖が躓くところから見てたもの。けど、すぐ後から乗ったアタシに全然気付きもせずに抱き合ってラブラブ始めるから、ちょっとからかっただけよ」