第16章 動き出した真相
「さて2人とも、戻ろうか」
そう声をかけると、愛聖さんも三月くんも僕の側へと来る。
「八乙女、世話になったね。楽くんもこの後の仕事、頑張ってね」
それじゃ、と軽く目を細めてからドアを抜けて通路を歩き出す。
ほぼ元通りにした楽屋へ僕が先に入ってから2人を招き入れると、愛聖さんは安堵の息を吐いて、僕の顔を見た。
『社長、あの・・・』
「分かってるよ、愛聖さん。事務所へ戻ったら僕との打ち合わせの前に少し時間をあげるから、2人で話しなさい」
『ありがとうございます』
「じゃあ、早速だけど帰りの支度しないとね?僕は三月くんとドアの外にいるから着替え終わったら声掛けて?」
ポンっと三月くんの肩を叩いて、いま入って来たばかりのドアから通路に出る。
三「社長は毎回こういう感じなんですか?」
「こういう感じって?」
三「えっと、愛聖が着替えたりする間は楽屋の外に出るとか」
チラリと楽屋のドアを見ながら、三月くんは僕を見て言う。
「あぁ、別に毎回ではないよ。楽屋によっては着替えをする部屋が別に付いてたりするからね。でもそうじゃない時は僕は同じ部屋の中にいるよ?今は僕以外に三月くんがいるから、同じ年頃の異性が部屋にいたら着替えにくいと思うからね」
三「なるほど・・・って、えっ?!いつもは社長がいても愛聖は着替えてるのか?!」
「勿論、背中は向けているけどね?だって僕は一応マネージメントを兼ねた同行者だし、それに以前の彼女は八乙女やTRIGGERのマネージャーの姉鷺さんがいても着替え位はしてたようだし。今はシャワー室やトイレ以外は、僕はいつもそばにいるようにしてるから」
それは、あの事件の後からだけど。
それまでは通常通り身支度をする時は席を外していた。
あの時のような悲しみを繰り返すことがないように、どうしてもと言う時以外は、出来るだけそばにいる事にしようと、彼女と話し合って決めた事なんだ。
八乙女の話を思い出し、僕もなにか先手を打たなければならないと思う。
既に愛聖さんと接点を持ってしまっている相手を、この先どう切り離せばいいのか。
単なる事務所の力と言うのは、余程大きな事務所でないと効果は薄い。
さて・・・どうしたものか・・・