第16章 動き出した真相
八乙女社長に言われて、楽の部屋で休ませて貰う。
さっき私の部屋にあった物は、いったいなんだったのだろうかと考えるも、私に見せないようにと楽が隠していたから、その物自体は結局分らずじまいでもあって。
だけど、スタッフさんが私を呼びに来て八乙女社長と楽屋を出る時に閉めたはずの鍵が開けられていて・・・と考えると、以前の記憶が掘り起こされて、やっぱり怖い気持ちはなかなか抜けない。
楽「インスタントで悪いけど、ココアなら飲めるだろ」
コトンと目の前に紙コップが置かれ、甘い香りが鼻を擽った。
楽「和泉兄、おまえもそこに立ってないで座れよ」
三「え・・・あ、あぁ・・・」
三月さんも促され、私の隣に少し間を開けて座る。
楽「着替えくらい持ってくりゃ良かったな。異様な光景だぜ、ったく」
楽が自分と私を見て、フッ、と笑う。
『撮影終わったままだったからね・・・誰かが入って来たら、三月さんはめでたく殺人犯?』
血糊だらけの自分を見て言えば、三月さんは目を丸くしてブンブンと首を振った。
三「やめてくれよ殺人犯とか・・・笑えないだろ。それにしても、どのくらい待ってりゃいいんだろうな」
ドアに目を向けた三月さんがそう言って小さなため息をつく。
楽「さぁな。ウチの親父と、そっちの社長がどうにかするって言ってんだから、黙って待つしかないだろ。オレのこの後の仕事は、そう急いで移動するってもんじゃねぇし。腹減ったし、待ってる間になんか食っとくか?売店くらいならこんな格好でも行けるだろ」
三「あ、それなら!」
そう言って三月さんは大きな手荷物を広げて幾つもの容器をテーブルに並べだした。
三「こんな時にって感じもするけど、オレ・・・差し入れ代わりに持ってきたんだよ。愛聖が美味いって言ってくれたやつ、いくつか詰めてきたから」
三月さんは並べた容器のフタを開けると、私を見て少しだけ目を伏せた。
三「お前が寮を出て行っちまってからも、なんかちゃんと人数分とか作っちまってさ。環かその分すげぇ食ってくれてたけど、それでも毎日、ずっと作ってた。いつ、戻って来ても愛聖が食いっぱぐれねぇように、とか・・・」
『三月さん・・・』
容器の中には、確かに私が美味しいって言った覚えのある料理が詰められていて、どれもこれも、とても美味しそうだった。