第16章 動き出した真相
❁❁❁ 小鳥遊音晴 side ❁❁❁
腹暗い話・・・まさかとは思うけど、それって・・・
八乙女から出る言葉は信じ難い物でもあり、この業界では稀に聞く事でもある。
最も、僕は事務所を立ち上げた当初より抱えている人材にそういった事は一切させてはいないけど。
それはここにいる、八乙女も同じ。
愛聖さんに言い放った言葉は恐らく、本心ではないだろうからね。
「しかし、あの奏音さんが黒幕・・・」
八「いや、本性を隠した黒幕は他にいるだろう。小娘ひとりで立ち回るには荷が重い話だ。所属しているプロダクションの人間以外が糸を引いている可能性の方が大きい。私が掴んだのはここまでだ・・・小鳥遊、あまりに気を抜いているようであれば、アレは返して貰うぞ」
またそんな言い方をして・・・さっきまでちゃんと名前を呼んでいたのに。
「そうだね・・・本来は僕のところよりキミの所にいた方が安全なのかも知れない・・・と、納得すると思った?残念だけど、彼女を返すつもりは更々ないからね?彼女が僕の所にいるのが嫌になったと泣いて縋ってきたら考えるけど、それは絶対にないと自信を持って言えるよ」
八「どうだかな」
「いやいや、絶対は絶対だよ?だって彼女はもう、自分の居場所を僕の所に作ってしまったからね~」
これ以上ないほどににこやかに言えば、八乙女の眉間に深い深い溝が刻まれる。
「きっかけはどうであれ、僕は彼女を受け入れた。彼女自身とも、必ず輝かせると約束もした・・・僕の事務所はキミの所に比べたらとても小さいけど、少しずつ彼女は光を呼び寄せてる・・・今はまだ小さな輝きをひと粒ずつだけど、それも集まれは大きな光へと変わっていくのは、キミか1番分かってるんじゃないのかな?」
八「・・・黙れ小鳥遊」
あ~、怖い怖い。
八乙女が不機嫌になると、ホント怖い。
でも僕は、不機嫌じゃない八乙女もちゃんと知ってる。
付き合いだけは、長いからね。
「さて・・・とりあえずば僕とキミで、ここを処理しなければね・・・」
テーブルに置かれた物に視線を送り、それから八乙女を見る。
彼女によく似せた人形は、その体を赤く染められ僕たちを悲しげな瞳で見つめている。
そんな瞳を遮るように僕はポケットからだしたハンカチを被せて、また八乙女を見た。