第16章 動き出した真相
・・・が、部屋の中はご丁寧に明かりまでついているが人の気配はない。
ゆっくりと頭だけを動かし中を見渡せば。
そこには思わず息を飲んでしまいそうになるような、誰かの悪戯にしては悪趣味すぎる物がテーブルの上に転がっていた。
『・・・楽、誰かいる・・・の?』
愛聖が不安そうな小さな声でオレを呼び、衣装を着流したままの背中をキュッと掴む。
「いや・・・人の気配はしねぇ。けど・・・」
言うべきか。
それとも、黙っているか。
いずれにしても、隠し通す事は出来ないが・・・どうする?
愛聖を振り返り、その頭を胸に押し付けるように抱き寄せながらどうしたものかと思案を広げて行き、結論に辿り着く。
「愛聖、落ち着いて聞いてくれ。部屋の中に、」
そこまで言いかけて、愛聖の向こう側に見知った姿が見えて言葉を途切らせる。
なんで親父が、あの社長と・・・?
小「三月くん、愛聖さん・・・こんな所で何をしてるんだい?」
八「楽。お前はいつまでフラフラとしている」
「オレはこいつに届け物があっただけだ」
八「ならば早く戻れ。お前は次の仕事があるだろう」
そんな事は分かってる・・・そう言い返そうとした所に、小鳥遊社長がオレたちの様子を見て眉を寄せた。
小「三月くん、愛聖さん・・・ここで何があったか、聞いてもいいかい?」
立ち竦む和泉兄と、それからオレと愛聖を交互に見て、その眼差しは真剣な物へと変化していく。
三「実は・・・」
和泉兄がオレがここに来るまでの事を話し出すと、それまで真剣ながらも穏やかさが残る小鳥遊社長の目が険しくなって行く。
「オレはたまたま愛聖宛てのメッセージカードが入った花束が自分のところに紛れていたから、それを届けに来たら、2人がそんな状況でいたから」
小「分かった。楽くんはまだ中には入ってないね?」
「はい、まだ・・・ただ、中の様子は覗き見ましたが・・・人の気配はなさそうでした。けど・・・いや・・・」
中にどんな物が置いてあるのかは、言わない方がいいだろうと先の言葉を飲み込む。
そんな気持ちを汲んだのか、小鳥遊社長は黙って頷いた。
なぜ、愛聖ばかりがこんな事に。
そう思いながらも、前の時に天が話していた事が頭の中を占めて行った。