第16章 動き出した真相
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
監督やスタッフにひと通りの挨拶をしてスタジオを出る。
オレも今日がオールアップだったから、愛聖と同じように花束を貰ったけど・・・この後まだ予定があるのにどうすんだよ、これ。
持ち歩くのは困難だし、だからと言って車に置いときゃ萎れちまう。
それになんだか、香りも強いしな・・・この花束。
とりあえず次の現場に向かう前に1度事務所に寄ってからでもと考えながら花束を見ていると、その中のひとつに愛聖宛てのメッセージカードが見えて足を止める。
いつ、混ざったんだ?
花束は全部、スタッフから手渡しされたはずなのに。
「届けてやるか?」
誰に言うでもなく呟いて、いま歩いて来た通路を逆の方向に歩き出す。
メッセージカード自体には大した事は書いてねぇけど、愛聖宛てならオレが持ってるのも変だろ?
そう思いながら通路を進めば、愛聖の楽屋の前で佇むふたつの人影が見えてくる。
あれは・・・和泉兄?
あいつはこの撮影には関わってないのに、なぜここにいるんだ?
・・・なんだか2人の様子もおかしい。
自然と足早になるのを止めることなく歩み寄り、声を掛ける。
「愛聖、お前の花束が混ざってたから届けに来・・・どうした?」
近くで見れば愛聖は顔色を悪くして佇み、そばにいる和泉兄は困惑している。
『あ・・・楽・・・鍵が・・・ね・・・』
鍵・・・?
それだけ言って、愛聖はまた黙り込んでしまう。
「おい、和泉兄。オレに分かるように説明しろ」
三「いや・・・それがオレにも良く分からないけど・・・愛聖とここに戻ったら、鍵を掛けたはずらしいんだけど、ドアが開いてるみたいなんだよ」
「ドアが?」
和泉兄からそれを聞いて、ハッと思い出す。
まさか・・・また・・・?
あの時の惨状を思い出し、問題となっているドアへ1歩進む。
「・・・どけ、オレが中を見る」
『やめて楽!・・・もし、もしまたどうにかなってたら・・・・・・』
ドアノブに手を伸ばすオレに縋りつくように、愛聖が体を寄せる。
「大丈夫だ、お前はオレが守ってやる」
小刻みに震える肩を抱き寄せ背中に隠し、ドアノブに手を掛け・・・一気に押し開いた。