第16章 動き出した真相
あぁ、もぅ、ダメだダメだ!
ちょっと気を抜くとスグにネガティヴになっちまう。
オレが一織のオマケでスカウトされたのは万理さんに詰め寄ってまでして事実を聞いた。
でも万理さんは、きっかけはそうだったけど社長はちゃんとオレの中に原石を見つけたから今があるんだって言ってた。
ナギにも愚痴を零したりもしたけど、それだってナギはちゃんとオレの話を聞いてくれて、ナギなりに答えを出してくれた。
つまり、オレだってもっと頑張ればいつかは愛聖みたいにスポットライトの下に立てる日が来るんだ。
オレにはオレの、オレにしかない良さがきっとある!
よし!と大きく深呼吸してまっすぐに顔を上げると、挨拶やらいろいろが終わった社長と愛聖がこっちに歩いて来て、愛聖がオレを見つけて驚いていた。
『三・・・月さん・・・』
「・・・よぅ・・・お疲れ様」
愛聖とちゃんと向き合おうと思っていたのに、いざ顔を見ると何となく腰が引けてしまう。
『どうしてここに三月さんが・・・?』
戸惑いを隠せないままで愛聖がぽつりと零す。
小「三月くんはね、ちょっとキミに用事があって訪ねて来たんだよ。さっきスタッフが僕を呼びに来たのは、三月くんが入口に来ていたからなんだ。じゃあ三月くん、僕は監督に用があるから後は頼んだよ?」
ね?とにこやかに笑って、オレに向けて愛聖の背中を押した。
『え、っと・・・?』
「撮影、終わったんだろ?ここじゃ立ち話も出来ないから楽屋まで送る。社長から鍵も預かってるし、行こうぜ?それ、オレも持つの手伝うよ」
『あ、はい』
ラッピングの音をガサガサとさせながら、大きな花束を抱える愛聖からそれを受け取り、スタジオから出る。
「楽屋、どっちだ?社長に鍵は預かったけど場所は聞いてなかったから」
オレがそう言うと愛聖はオレの1歩前に出て、自分の楽屋はこの先の通路の最奥にあると教えてくれて、それ以外は特に会話を交わすこともなく歩けば、やがてその楽屋の前に辿り着く。
「鍵、開けるぞ?って、あれ・・・ドアが開いてる・・・」
社長に渡された鍵を差し込もうとすると、それ以前にドアが閉まりきっていない事に気付いて愛聖の顔を見る。
その顔は、蒼白していた。