第16章 動き出した真相
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
「僕を呼び出したのがキミだったなんて驚いたよ」
スタッフから僕を訪ねて来た人がいる、なんて聞いて入口まで来てみれば、予想もしなかった人物がちょこんと椅子に座らされていた。
三「すみません・・・社長も忙しいの分かってたのに」
「いやいや、別にそこはいいんだよ。それにちょうど楽屋に八乙女が来ていてね、僕がいない間の留守番を頼んであるから」
そう言うと三月くんは驚きながら、あの八乙女社長に留守番を頼めるだなんて本当は仲がいいんですね・・・と漏らした。
まぁ、仲が悪くはないかなぁ・・・けど、決して大の仲良しってワケでもないけどね・・・なんせ相手はあの八乙女だし。
眉間に深い溝を見せる八乙女の顔を思い描いて、僕にはすぐに戻れと言われている事を思い出す。
「三月くん、これから愛聖さんの撮影があるんだ。それが終わったら時間は取れると思うから、自分の言葉で・・・話をしなさい」
三「あ、いや・・・でも・・・」
「大丈夫。ちゃんと向き合えば分かってくれるよ」
行こうか、と三月くんの背中を押して歩き出す。
確かに愛聖さんが僕のところに来て寮を出たいと言って来た時は、どうしたものかと考えたけど。
話をよく聞いてみれば、それは一過性の事だな?と予測して、部屋が見つかるまで万理くんのところにいなさいと提案した。
万理くんのところなら、何かあってもすぐに対応が出来るから。
それに、他のどこに預けるよりもずっと安心だ。
楽屋までの通路を三月くんと歩いて、その途中にある撮影スタジオの前で八乙女が腕を組んでこっちを見ているのに気付き、もしかして・・・と声を掛ける。
「八乙女、留守を頼んで悪かったね」
八「遅い。10分だと言ったはずだ」
「それはありがとう。それで、八乙女がここにいるって事は・・・?」
そう訊ねてみると、やはり予想通りの返事が届く。
八「ついさっき佐伯にスタンバイが掛かって、お前がいないから私が連れて来たまでだ」
「重ね重ね済まなかったね。僕はもう大丈夫だから、八乙女は自分の仕事に、いや、ここまで来たら見て行くんだろ?」
そう言うと八乙女は、1度深い溝を僕に向けながらスタジオの中へと入って行った。
素直じゃないんだから。
そう心で笑って、僕たちも中へと足を踏み入れた。