第16章 動き出した真相
小「僕は演技指導は分野じゃないから出来ないけど、セリフ合わせの相手くらいならお手伝いする事はできるよ?と言っても、あちこち棒読みだらけで役には立てないかも知れないけどね?」
『そんな事ないですよ!前の二階堂さんとのドラマだって、待機中に社長が二階堂さんの役でセリフ合わせしてくれたじゃないですか。実は私、あの時の二階堂さんのセリフだって分かってるのに、社長に真剣な顔で見つめられて、その・・・愛してるって言われてドキドキしちゃったんですから』
まるで本当に、自分が言われてるかと思うような仕草を含めて、社長の雰囲気に飲まれそうになったんだから。
日頃から大バーゲンのように愛してるを連発する千とは、全然違ったし。
あれで演技指導は分野じゃないだとか、ちょっと反則ですよ社長・・・
小「えっ?!・・・それ本当?」
本当です・・・恥ずかしくて言えなかったけど。
そう返すと社長はどこか・・・というより、嬉しさを隠すことなく、やったぁ!と喜んでいた。
小「本職の愛聖さんにそう言われるだなんて、八乙女にも聞かせてあげたい位だよ。なんて言ったら、そんな無駄口を叩いている暇があるのか!だとか怒られそうだけどね~」
楽しそうに笑い出す社長に、そうですね、と笑おうとして、社長の後ろに見える姿に・・・硬直する。
『八乙女、社長・・・』
小「え、八乙女?」
私の様子に大きく振り返った社長が八乙女社長の姿を見て、珍しい来客だと苦笑を見せた。
小「キミが現場に来るって知ってたら、僕たちから挨拶に行ったのに」
八「通り掛かっただけだ。それに待機時間だと言えどドアも開けっ放しで無駄口を叩くほど、小鳥遊・・・お前はそれほどに余裕があるのか?」
今まさに社長が言っていたような事を不機嫌な顔を顕にして言う八乙女社長に、思わず私は思わずウチの社長の顔を見て小さく笑ってしまう。
だって社長・・・目だけで、ほらね?って同意を求めるんだもん。
『ドアは私が開けたままにしていたんです、空気を入れ替えようかと思って。身支度は終わってますし、待機時間に台本の最終確認をしようとしてたところなんですよ?』
八「そうとは思えない賑やかさだったが?」
小「それはほら、気分転換も時には必要でしょ?そうだ!せっかくだから八乙女もお茶くらいどう?さ、こっちに座って?」