第16章 動き出した真相
昨夜は万理の言葉を胸に留めながら一緒にベッドに入って、それからもいろんな話をして、気がつけば寝落ちしてて。
でも、なんか凄くよく眠れた気がする。
今日、この撮影が終わったら私はオールアップの予定だから、そしたら・・・三月さんにちゃんと謝ろう。
三月さんだけじゃなくて、みんなにもだけど。
私がいなければ、みんなそれぞれが自分と私を比較することなく上手く立ち回れる・・・そう思ってたけど。
やっぱり、寂しくて。
万理との帰り道、四葉さんと一織さんと同じ学校の制服を着た学生を見掛けて、いま何してるんだろうって考えたり。
洗濯物を畳みながら、逢坂さんはこうやって畳んでたなとか思ったり。
万理と買い物してる時は、二階堂さんの好きな銘柄のビールがあるなって見ちゃったり。
万理の部屋の掃除をしてる時、ラグマットが気になって鬼のように掃除機をかけたり。
社長とコンビニに立ち寄った時に、まじかるここなのお菓子を見つけて買ってしまったり。
昨日だって、万理が作ってくれたハッシュドビーフを食べた時、いつもと味が違うって感じて、味付け変えた?なんて言っちゃったけど。
でもすぐに、それは三月さんが作ってくれるご飯と比べちゃってる事に気付いた。
私が離れれば大丈夫。
みんなだって、きっと私がいなくても元の生活に戻るだけ。
そう思ってたのに、そうじゃなかった。
私が、寂しかったんだ。
『はぁぁぁ・・・何やってんだろ、私。バカみたい』
開いただけの台本に顔を埋めながら声を漏らせば、背後からクスクスと社長の笑う声が聞こえて、しまった・・・と更に顔を伏せる。
小「随分と盛大なため息だったね」
『ごめんなさい・・・大事なシーンがあるのに、なんだか辛気臭いことしちゃって』
小「大きなため息の理由はそれもひとつかな?監督からも今日1番に力をいれるシーンだって聞いてるからね・・・あれ、珍しく緊張しちゃった?」
場を和ませてくれようとしているのか、パソコンと向かい合っていた社長は軽快な口調で話しながらその手を止める。
『それも理由のひとつでもあります。シーンの流れ自体は頭に入ってはいますけど、感情表現というか、その辺が難しくて上手く消化出来なくて、何度も台本を読み返してはいるんですけど・・・』
開いたままの台本には、幾つもの書き込みが見える。