第16章 動き出した真相
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
うん、これでよし。
コトコト煮込んでいたガスを止めて、あとは愛聖がシャワーから出たら配膳して・・・なんて考えながら、必要な食器を揃える。
それにしても、社長も随分と大胆な事を考えたなぁ・・・
灯台もと暗しと言えば、そうなんだけど。
一時的に寮を出たいと言い出した愛聖に、社長は少し考えてはいたけど、まさか俺の家に愛聖を寝泊まりさせるとか。
まぁ、、寮に入る前はここに居たんだから勝手知ったる的な感じではあるだろうけど。
その時と今とは、愛聖の置かれている立場も違う。
とりあえず・・・マスコミだけには気をつけないとな。
ましてや、アイドリッシュセブンがいろいろと週刊誌に狙われてる事を考えれば、愛聖だって狙われてる可能性もあるんだし。
アイドリッシュセブンと同じ事務所の女優が、男の部屋に出入りしてるだなんてバレたら、マスコミが黙ってないだろうから。
その辺は社長がもしそうなった時に理由は考えておくとは言ってたけど、俺も用心しておかないとね。
物音ひとつしないのもと思ってテレビをつけると、同じタイミングで愛聖がシャワーを終えて部屋に戻って来た。
『いい匂いする!もしかして夕飯って』
「正解!ハッシュドビーフだよ。一昨日のテレビ番組で特集してた時、愛聖が食べたいって言ってたからね」
『やった!万理大好き!』
「っと・・・大好きでいてくれるのは分かったから、早く髪くらい乾かしておいで?こっちの準備は俺がやっとくから」
大好き!の勢いで抱き着く愛聖を引き剥がして、ほらほら風邪ひくからと出て来たばかりの脱衣所へと追い返す。
子供の頃から知ってるとはいえ・・・風呂上がりでいい香りをさせながら抱き着くとか・・・どんだけ俺には無防備なんだ?
まさか、とは思うけど。
千にもこんな感じなんだろうか・・・
まぁ、千が愛聖に対してオオカミに変貌するとは思えないけど。
いつも側には百くんだっていることだし。
クルクルと鍋の中をかき混ぜながら、百くんがいてくれて安心だと頷きながらご飯を皿によそう。
『おっ待たせ~・・・うわぁ!美味しそう!』
髪を乾かした愛聖が目をキラキラとさせてテーブルにつく。