第16章 動き出した真相
いくら相手が愛聖だからって、あの場面で咄嗟に抱き寄せるだとか!
ドラマや映画の撮影でもあるまいし、なにやってんだかオレは!
いや待て・・・そういった関連だったらあの流れだとキス、とか・・・?
「NOOOOOOOO!!」
壮「うわぁっ?!ど、どうしたんですか大和さん?!」
思わず大声を出したオレに、ソウが飛び退きながら身構える。
「あ、いや・・・その、なんでもない・・・多分・・・」
さすがに今の妄想はマズイだろうって!
そりゃ確かにドラマ共演の時はキスしたよ?!
あぁしたさ!
違う!なに開き直ってんだオレ!
けどあれはお互い役に入り込んでの割り切りタイプのであって、普段の生活ではありえない事だし?!
ダメだ・・・考えれば考えるほど、あの時に抱き寄せた感触を思い出しちまって、なんか自分で自ら底なし沼に足を入れてる気がする・・・
「ソウ・・・お兄さんはちょっと、アレだ」
勢いつけて立ち上がり、ソウの顔を見る。
壮「あの、アレってなんですか?」
「だからその、アレだ・・・へ、部屋に戻って腹筋100回位こなしてくる」
壮「・・・腹筋、ですか?・・・えっと・・・あ、はい・・・行ってらっしゃい・・・」
不思議そうな顔をするソウの横をすり抜けて、足早に自分の部屋へと戻る。
とりあえずミツやリクが戻るまでに、この煩悩をなんとかしないと平常心が保てなくなる。
よし、やるぞ!と息巻いて床に寝そべり、両手を頭の後ろに構えて腹筋を始める。
なにやってんだオレは・・・と思いつつも、そんな事を考えてる余裕があるなら、もっといろいろ考えなきゃいけない事があるだろう?!と自分に気合いを入れて腹筋を続けながら、それでもどこか頭の片隅では・・・本当に愛聖はここに戻って来ないんだろうか・・・と、そんな事を考えていた。