第16章 動き出した真相
本来なら、あんな場面はリーダーであるオレが上手く立ち回るべきだったのに、事情が邪魔をして出来なかった。
「それに、オレがミツに言いたかった事は大概おまえさんが言ってくれてたしな?ミツにはミツのいい所がある、ってやつ。努力してもなかなか思うように上手くなれないヤツこそ、同じように悩んでるヤツの背中を押したり、素直な気持ちで励ましたり出来るんだ、とか」
それに、ミツがイチのオマケなんかじゃないって事も、か。
『別にあれは私が思ってた事を伝えただけです。でも、』
「ミツには届かなかった、とか思ってるワケ?」
愛聖の言葉を遮るように言えば、オレから視線を外して俯いてしまう。
まったく・・・ミツといい、愛聖といい、手のかかるやつだ。
「オレはそうは思わなかったぜ?愛聖の言葉は、ちゃんとミツに届いてる。ただ、あの時のミツはそれがちゃんと伝わってても、ミツも気持ちが絡まってて素直になれなかったんだよ。その証拠になるか分からないけど、愛聖がリビングからいなくなってから、出てたぞ?」
『出てたって、なにがですか?』
「なにがって、ミツの言葉を借りれば・・・目から水みたいなモノが、かな」
オレもそれを見たのは一瞬だけど、でも、確かに見たんだ。
「だからこの纏めた荷物は、」
・・・部屋に戻せ。
そう言いながらそれに手を伸ばすと、愛聖はオレより早く自分の方へと寄せる。
『何が正解で、何が不正解なのかは・・・私には分かりません。だけど今、私が出来る方法がこれしか浮かばないんです。後輩と言えど、私の後ろには八乙女プロダクションにいたという過去は消えない。アイドリッシュセブンの後輩だと思ってくれて可愛がってくれてはいても、なにかあればどうしてもその経歴が浮かび上がってしまう・・・その経歴があってこその今の私でもあり、消し去ることも忘れ去る事も出来ない。そしてそれが、前に進もうとするみなさんの足枷になってしまうのなら、距離を開け、』
「オレが行くなって・・・言っても?」
なに・・・やってんだ、オレ・・・
いや、でも・・・寂しそうに微笑みながら話す愛聖を見てたら、つい、体が勝手に動いて。
って、なんかすごい場面まで思い出しちゃったよ・・・
いくらなんでも、オレちょっとヤバくないか?!