第16章 動き出した真相
それに都合で代役を頼むんだから、オレがテンパってリテイク繰り返さないようにしなきゃ。
既に頭には入ってる流れをもう1度確認しておこうかと資料に目を落としながら、ふと考える。
最初の打ち合わせから今日まで、オレは何度もこの資料を読み込んで確認はした。
だったら、この資料を愛聖に渡してあげたらいいんじゃないか?
いきなりぶっつけ本番になるより、少しでも早く流れをイメージする事が出来れば負担も少ない。
元々の演者と愛聖はタイプが違うから、もしかしたら修正があるかも知れないけど、情報がないより、ある方がいい。
「よし、今から届けに行こう!」
姉「どこに?」
「だから愛聖の所にって、マネージャー?!」
資料を掴んで立ち上がった所に声をかけられ振り返れば、いつの間にか戻って来ていたのかマネージャーが立っていた。
姉「いま戻ったとこ。それより愛聖の所に、なんの用かしら?」
「急に頼んだ事だし、なにも情報がないよりはって、コレを・・・」
手持ちの資料を見せれば、マネージャーは目を細めながらもキラリと光を宿す。
姉「龍之介、アンタのそういう優しいところは褒めてあげるわ。でもね、あの子にはきっと不要のものよ?」
「不要って?」
自分の手元を1度見てからマネージャーの顔を見ると、そんなオレに、あら?忘れたの?とマネージャーは笑った。
姉「愛聖は、あの社長が色んな指導を施した教え子よ?セリフがないチョイ役くらいなら資料なんてなくたって大丈夫。TRIGGERとのCM、特に龍之介とのカップリングだってセリフなしだったのにあの出来映えだったでしょ。ちょっとした小道具と、あとは場の雰囲気を飲み込むのが上手いから心配いらないわ」
マネージャーの言葉に、それは確かに・・・と納得する。
オレとの撮影の時もセリフなしだったけど、その場にあった飲み物を上手く使ってストーリーの流れを自分で作り出していたから。
姉「それより心配なのは龍之介、アンタの方よ?急な代役とはいえ相手は愛聖よ?リテイク連発してガッカリされないように集中しときなさい」
分かった?と念押しされて苦笑を見せると、マネージャーは変更があった事を社長に連絡して来るといって、また楽屋を出て行った。