第16章 動き出した真相
『龍?さっき会ったばかりなのに電話とか、どうしたの?』
「こっちの撮影が事情で止まっててさ?あ、愛聖の方はまだ撮影してるよね?」
とりあえずな感じで愛聖の撮影進行を聞けば、あとワンシーン撮ったら今日の撮影は終わるんだと教えてくれる。
「じゃあ、それが終わったらスケジュールはフリー?」
『まぁ、フリー・・・かな?私はTRIGGERみたいに死ぬほど忙しいスケジュールって訳じゃないし。終わったら社長と帰るだけだけど?』
順調に行けば、オレが何時間か待つだけでいいって事か・・・
「あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど・・・いい?実は・・・」
事の成り行きを説明すれば、自分ひとりの考えじゃ代役は引き受けられないと言われてしまう。
マネージャー、監督の説得どうしたかな?なんて話していれば、電話の向こう側がヤケに騒がしくなる。
姉 ー 愛聖、電話の相手は龍之介しょ?!ちょっとアタシと代わりなさい。もしもし、監督からはOK貰ったわ、この子の名前出したらひとつ返事で。こっちの撮影が終わるまで待つって。じゃあアタシはそっちに戻るわね ー
・・・仕事、早過ぎるだろ。
『・・・っと。もしもし龍?なんか決まっちゃったみたい。姉鷺さん、相変わらず仕事早過ぎ』
「アハハ・・・そうだね、オレもいま同じ事を考えてたよ。じゃあ、撮影頑張ってね。いくらでも待つし、焦らなくていいから」
『ありがとう。でも、待ってくれてるのは龍だけじゃないでしょ?いくら急な代役だって言っても、そこはほら、私も一応、女優のつもりですけど?』
電話の向こう側で愛聖がクスクスと笑う。
「そうだったね。ホント助かったよ、今度食事でもご馳走するよ」
『やった!なんかやる気スイッチ入った!』
さっきとは違う元気な笑い声にオレも笑いながら、じゃあ後でねと通話を終える。
今日の本来の相手役は、愛聖とはタイプが違ってセクシーさを売りにしているモデルだったから、実はちょっとオレも仕事しにくいなって思ってた。
商品そっちのけであんまり正面からグイグイと売りを押されたら、なんか違うと思うし。
けど、愛聖は違う。
あくまで主役は商品で、自分たちはそれをどう画面越しに伝えられるかって考えてる。
ストーリ仕立てのCMともなれば、専門分野だしね。