第16章 動き出した真相
少し話が逸れてしまいましたと苦笑して、また話を続ける。
『三月さん。私がここで再出発する仕事になったCMの撮影の時、休憩時間に三月さんに電話した事・・・覚えてますか?』
楽たちとのCM撮影の時の話を出すと、三月さんはおずおずと顔を上げてくれる。
三「・・・・・・あぁ」
『あの時はホントに気持ちがいっぱいいっぱいで誰かに寄りかかりたくて、でもその誰かを考えた時、真っ先に浮かんだのが三月さんだったんです』
一「甘ったれ性分のあなたが、大神さんではなく?」
陸「一織!どうしていつもそう辛口なんだよ」
一「普段の佐伯さんを見ていれば、私じゃなくても同じ事を思うでしょう?」
陸「だからって!」
大「イチ、リク・・・」
いつものように一織さんと七瀬さんが向かい合うと、二階堂さんが2人の名前を呼んで、今はやめろとそれを制した。
『あの日はTRIGGERのスケジュール都合で弾丸撮影になってて、休憩を挟みながら天と楽のを撮って。あとは龍とのシーンだって切り替えしないといけないのに、それが上手く出来なくて。自分にもその理由は分かってるのに、気持ちの切り替えが出来なくて誰かに少し寄り添って欲しかった・・・それが、万理じゃなくて三月さんだったんです』
あの時、もし万理に電話していたら。
きっと万理はなんの迷いも躊躇いもなく私を甘やかしてくれる。
だけどあの時は、そうじゃなくて。
三月さんに、大丈夫だって言って欲しかったんだと。
だから三月さんの顔が浮かんだんだと思う。
自分の欠点を克服しようと人一倍努力してる、三月さんに。
それを伝えれば、みんなそれぞれ思うところがあるのか黙ったまま何かを考えていた。
『三月さんは自分の事を歌もダンスもイマイチだってレッテル貼ってるかも知れません。けど私は、そういう所もいい意味で三月さんの個性なんじゃないかって思います。何もかもか完璧な人ばかりのグループなんて退屈なだけです。ファンの皆さんは自分にないものを求めて、それを持っている人に憧れて応援してくれるだけじゃありません。自分もそうだ、私と同じだと共感して、一生懸命頑張る人を応援しながら自分も頑張ろうって思う人もいるんです。そして、ここにいる皆さんが・・・その誰かの等身大でもあるんです』