第16章 動き出した真相
ここでみんなに話す事は出来ないけど、それこそ千は万理が姿を消してから、呼吸をするのを忘れてしまったかのように抜け殻になってしまった時期もあった。
『私、実は三月さんが自主練するのを見てるの、最初は辛かったです。過去の自分を見てるようで、なんか胸の奥がチクチクと苦しくて。けど、そう思いながらもこんな私にも出来たんだから、三月さんなら絶対に出来るって信じて、頼まれれば自主練付き合ったりもして来ました』
三「オレは・・・愛聖とは違うんだよ・・・お前はオレたちの映像を見て、簡単にフリを覚えてたじゃねぇか。努力したって、頑張ったって、出来ないヤツはいるんだよ」
『えぇ、いるでしょうね』
三月さんの言葉を否定もせず、肯定の言葉を言う私にみんなが驚きの顔を見せた。
『私も三月さんが言う努力しても頑張っても出来ないヤツの1人ですから。私はデビュー前のRe:valeのライヴの帰りに八乙女社長に声を掛けられて、その場で名刺を渡されました。興味があるなら、ここに来い・・・そう言われて。最初は変な人にスカウトされたのかと不安にもなって・・・』
それからはデビューするまでの私のことを少しづつ話した。
スカウトされたからすぐデビュー出来た訳じゃない。
最初はマネージャーさえいなくて八乙女社長が兼任してくれてた事。
その内、姉鷺さんがマネージャーとして少しの期間いてくれた事。
なんの説明もなくオーディション会場に放り込まれた事。
仕事が軌道に乗るまでは時間さえあればレッスン漬けだった事。
全部、話せることは話した。
『皆さんが私に隠れてこっそり見てたRe:valeとの共演映画・・・あのオーディションなんて驚きでしたよ。部屋に入ったら監督しかいなくて、その監督が目の前に立ったと思ったら、私にひと言・・・オレの目の前で1枚ずつ服を脱げ、って』
陸「ぬ、脱いだんですか?」
誰よりも驚きの顔をした七瀬さんが言って、戸惑いを隠せずにギュッと手を握りしめる。
『もちろん、断固拒否です。なんの説明もなく、個室で大人の男性と2人きりで。だから私は、そんな事で決められる仕事ならこちらからお断りしますって睨みました。後で聞いた話ですけど、その時に脱がなかったのは私だけだったらしくて未だに監督さんにはオレを睨んだのはお前だけだって会う度に言われます』