第16章 動き出した真相
『大丈夫です・・・なんでもありませんから、ホントに』
一「そうは思えない兄さんの声でしたけど、それでもあなたは何もなかったと言うのですか?」
チラリと三月さんを見てから一織さんは私に視線を戻す。
大「オレがミツを怒らせただけだ、気にすんな」
三「そうやって自分せいにしてカッコつけんのやめろよな!言えばいいだろ・・・オレが悪いんだって!・・・それとも、自分の親が大物俳優だからって余裕ぶってんのかよ!」
一「兄さん、さっきも言いましたがあの類の記事に惑わされるのはやめましょう」
三「お前だってそうだろ一織。オレを応援するフリをして今までずっと、そんなの無理だとか笑ってたんだろ!」
一「そんなことある訳ないじゃないですか!いつだって私は兄さんの為にいろいろ考えてました!」
三「だから自分がスカウトされた時にオレも入れて貰えばいいって考えたのかよ!そんなのオレの為でもなんでもないだろ!」
取り付く島もない様子の三月さんに、その場にいる誰もが口を閉ざしてしまう。
大「・・・話にならないな。イチ、それからみんなも気にすんな。愛聖、こんなタイミングで悪いけどこれ渡しとくわ・・・お前さんも、部屋戻ってな」
私に雑誌を手渡して、二階堂さんは私の背中に手を当ててリビングから出るように促すも、私はそれを拒否するように小さく首を振って三月さんを見る。
『三月さん・・・私は今まで、三月さんが一織さんのオマケでアイドリッシュセブンの一員になれたなんて思った事はありません。既に分かっているかと思いますけど、この業界って単なるラッキーとかそういう類の物じゃ続けられる事は出来ないんです。もちろん、きっかけはラッキーな事があったとしても、そこから先はそれだけじゃやって来れないのも三月さんは身を持って知ってると思います』
私が話し始めても、三月さんは私を見ることもなく俯いたまま何も言わずにいる。
『今でこそ絶対王者と呼ばれるRe:valeだって、そう呼ばれるまでには血の滲むような努力をして今の地位にいるんです。それでも、そんな姿をみんなに悟られないように今のRe:valeは頑張って来たんです。三月さんの好きなゼロだって、きっとそうだったんじゃないかな?って思います。最初からゼロはゼロじゃなかったと、私は思います』
何もせずに成功出来る人はいないから。