第16章 動き出した真相
愛聖にポンっと手を当てて、よっこいしょ・・・と言いながらベンチから腰を上げる。
『・・・おじいちゃんみたい』
「コラコラ!あ、そうだ。お前さん、とりあえずこれ着とけ」
さっき触れた肩口を思い出して、さくっと脱いだシャツを掛ける。
『着とけって、別に寒くは・・・』
「寒いか寒くないかじゃなくて、肩も腕も・・・要するに露出し過ぎなの。嫁入り前なんだからこの時間に出歩く時はそんな格好は禁止な」
『お兄さんじゃなくて、お父さん?』
「おじいちゃんより若返ったけど、なんか複雑な気持ちになるからやめなさい」
素直にシャツに袖を通す愛聖を見ながら言って、ソウやイチと同じ事をしても自分はなぜ年増扱いなんだ?と乾いた笑いを漏らす。
環「あーっ!ヤマさんとマリー、見っけ!!」
「タマ?」
いざ公園の入口へ向かって歩き出せば、道の向こう側にはタマがいて。
環「りっくんが、俺の王様プリンはマリーが持ってるって言うから迎えに来た」
『やっぱり待ち切れなかったんですね。はい、どうぞ?』
環「ぅす。待ち切れないから、いま食う」
「歩きながら食うとイチにまた怒られるぞ?」
環「すぐ食うし、いおりんにはバレない」
いや、イチにはバレるだろ。
環「つうか、なんでマリーがヤマさんの服着てんの?あ、もしかしてナギっちが言ってるアバンチュールってやつしてたのか?そこの公園で」
「そういうナギの訳わかんないのは覚えなくていいから」
『その前にアバンチュールの方を否定して下さい』
環「そんなに必死だと逆に怪しい」
『四葉さん!』
さっきまでの静かさはどこへ行ったんだとこめかみを押さえて、置いてくぞ?と歩き出す。
『可愛い後輩を置いてきぼりにするとか』
「じゃ、ほら。せっかくだから繋いじゃう?」
小さく笑って手を差し出せば、なんの迷いもなく重ねられる小さな手。
環「ヤマさんズリぃ!俺も繋ぐ!」
『四葉さんが二階堂さんと繋ぐとか・・・ある種の方々に得ってやつですか?』
「ハハッ・・・勘弁してよ、ホント」
『な~んてね、ウソ』
環「俺、ヤマさん好きだけど?」
「・・・え」
『やっぱり二階堂さんて、いろんな意味で先輩だ・・・』
「やめなさいっての!」
そんな笑い声を響かせながら、寮へと帰った。