第16章 動き出した真相
これで前より減ったのか?
じゃあ、今まではもっと・・・
そう考えれば考えるほど、言葉に詰まる。
いつまでも続く着信を受けながらも、何気ない顔をしてオレたちの背中を押して、仕事をこなしてたのか?
オレたちの誰にも、辛い気持ちを見せずにひとりで耐えてたのか?
ひとりでいる時だって着信はあっただろうに。
そんなの・・・
「怖かっただろ・・・」
呟いた言葉に、愛聖はキュッと手を握り締めて俯く。
そんな姿に思わず手を伸ばせば、そこでやっと気付く微かな肩の震えに思わず自分の胸へと抱き寄せる。
「オレたちはそんなに頼れない?」
『そういう訳じゃなくて・・・本音を言えば、私の方が遥かに先輩だから我慢しなきゃとか、頑張ってるみんなに迷惑かけられないとか・・・自分で余計な境界線作っちゃって』
「まぁなぁ・・・本当はソウが気にするようにオレたちの大先輩なんだよな。けど、愛聖・・・ここじゃオレたちの方が先輩だ。もっともっと頼って、甘えていいんだぞ?それこそ、万理さんとか、あの溺愛半端なくて、人騒がせで、お前さんに構いたがりの大先輩を名乗る2人よりも・・・だ」
『万理は別として、千や百ちゃんは凄い言われよう』
「当然だろ?だってオレたちの可愛い後輩だってのに、ちょっかい出してくるし?まったくけしからん大先輩でお兄さん困っちゃう」
いつもの調子で返せば顔を埋めたまま、愛聖はプッと吹き出した。
「おいおい、それはどっちに対しての笑いだ?オレか?それとも大先輩の方か?」
『フフッ・・・どっちも』
「あらま、可愛くない後輩だこと」
『さっきは可愛い後輩って言ってたのに?』
「さぁて、どうだったかなぁ?」
とぼけたフリをして言えば、ズルい!と膨れて愛聖がまた笑って、オレの顔を見る。
『二階堂さん、なんかいろいろありがとうです。それから・・・』
「ん、なんだ?」
『そろそろ帰りましょうか?二階堂さんにこうされてると暖かくていいんですけど、四葉さんが王様プリンを待ち侘びてると思うから』
このタイミングでタマの王様プリンを言い出すとか、さすがリクに負けず劣らずな空気の読めなさ・・・
それとも、敢えて空気が読めないフリをしてるのか。
どっちにしても、今は。
「んじゃ、帰りますかね」