第16章 動き出した真相
大「オレたちにとってあの曲は、今も変わらず大事な曲のひとつだ。例え表世界で歌う事が出来ないとしても、誰が・・・何と言おうとも」
その言葉を最後に、静かな時間が私たちの周りを過ぎていく。
あの曲はもう、どの場所でもきっとアイドリッシュセブンの歌として歌う事は出来ない。
それを分かっていて、それでもみんなは大事な曲として胸に留めて行くんだと思うと切なさで胸が苦しくて、そっと自分の胸に手を当てた。
大「あぁ、そうだ。せっかくだからついでに言っとくけど」
そう言いながら二階堂さんは、急に私の肩に腕を回して自分へと引き寄せる。
『ちょっ、二階堂さん?!』
大「あんまりウチの可愛い後輩を誑かすのはやめて貰えませんかね?」
『た、誑かす?!』
楽「おい・・・人聞き悪い言い方をするな」
大「知ってると思うけど、この佐伯 愛聖 はオレたちに初めて出来た後輩なんだ。時々びっくりするような無茶したり、なんかいろいろ抱え込んだり、ひとりで泣いたり・・・そんな、可愛い後輩が毒牙に掛かるのを放って置けないっつうの?」
えっと、毒牙ってのはつまり・・・楽の事を言ってるのかな?
でもそれなら、千の方がとてつもなく猛毒な気もするんだけど。
楽「二階堂、何が言いたいんだよ」
大「まぁそう、怖い顔するなって。要するに、先輩として可愛がってくれるのは有難い。けど、困らせたり泣かせたりするなって事。もし、悲しませるような事をするなら、オレは、いや・・・オレたちはオレたちのやり方で、この可愛い後輩を守る」
楽「フン・・・言ってろ」
不機嫌そうにそう言った楽はくるりと踵を返し、ゆっくりと歩き出す。
でも今・・・楽は、ちょっとだけ口元を緩ませてた気もする。
きっとそれを楽に言ったら、いつもみたいに、うっせぇよ!とか、言うんだろうけど。
『楽!・・・おやすみなさい』
なんの裏もなく後ろ姿に言えば楽は立ち止まり、振り返りもせずに片手を軽く上げて、また歩き出した。
大「何やっても抱かれたい男No.1ってのは、何やってもサマになるよなぁ。ま、お兄さんも負けてはないと思うけど?」
ニヤリと笑いながら私を見る二階堂さんに笑い返して、もう一度楽の姿を視線で追って小さく息を吐く。
『二階堂さん、さっきのアレはなんだったんですか?』