第16章 動き出した真相
大「そいつは愛聖に感情をぶつけたよ。愛聖はTRIGGERと同じ事務所にいて、今も仲良くて頻繁に連絡を取り合ってる。だから自分たちの曲を、TRIGGERに流したんじゃないのか?・・・ってね。要するに愛聖は疑惑の目で見られたって事だ」
楽「愛聖はなにもしてねぇのに、そんな風に思われたとか・・・」
信じられないという顔をした楽が、視線を外しながら悔しげに言葉を飲み込む。
大「それだけじゃない。ついこの間、うちの事務所に盗みに入ったコソ泥がいてね。結果的には誰の指示でもなくスタンドプレーだったらしいけど、愛聖は偶然にも・・・その現場に出くわしてしまった」
楽「本当なのか愛聖」
楽が私を真っ直ぐに見て、どうなんだと更に問いかける。
『うん・・・本当だよ』
大「事務所に急用が出来て後から事務所に向かったメンバーが、事務所の中から愛聖のスマホの音はするのに中は真っ暗で様子がおかしいって連絡を受けてオレも駆けつけたけど、先に中に入ったそいつらが愛聖を見つけた時、身動き取れないようにされてたらしいぜ?怖かっただろうな・・・それ以前にも似たような事があったってのに、そんな風にされて」
楽「あれを・・・知ってるのか?!」
思わず言った楽の言葉に、今度は二階堂さんが頷いてみせる。
大「ま、それに関してはこっちもワケありで知ったって感じだけどな。まぁ、それはそれとして、リクが言いかけた愛聖だって被害者だってのは、そういう事だ。捕まえた犯人の素性を公にすることもなく事実を公表もしない代わりに、ウチの社長はそっちの社長の所に話をつけに行って、それで終わりってトコだな」
楽「知らなかったとはいえ、オレたちがアイドリッシュセブンの曲を歌ってただなんて・・・それも、デビュー曲として用意された、大事な・・・」
楽・・・
思い詰めるような顔を俯くことで隠す楽は、自分の手をグッと握り締めていた。
それは、二階堂さんもにも言わずに見ていて。
楽「悪かった・・・謝って済むことじゃないのは分かってる。けど・・・」
苦しそうに言葉を繋ぐ楽を見て、二階堂さんが大きく息を吐く。
大「言っとくけどな、八乙女・・・例えあの曲がTRIGGERの物として歌い続けられたとしても・・・」