第16章 動き出した真相
楽「七瀬から聞いたなら話は早い。あいつはさっき、俺たちのプロデューサーが曲を盗み出し、愛聖さえその被害者だと言った。どういう意味だ?無関係じゃないなら、知ってるだろ?」
大「・・・分かった。そこまで知りたいなら、リクや愛聖の代わりにオレが話す。ただ、聞いた後にクレーム言うのはナシだ。それでも聞きたいってなら」
楽「・・・話せ。俺には聞く権利があると思ってる」
毅然とした態度で言う楽に、二階堂さんは1度困った顔をしながらも話し出した。
大「サウンドシップの代役として歌った曲。あれは元々オレたちがデビュー曲として発表するハズの曲だった。それも、PVまで撮り終えてた。撮影してた沖縄から戻ったら事務所が荒らされてて、デモが入ったディスクだけが盗まれてた。そしてオレたちが駅前通りのミニライヴでそれを発表しようとした直前、駅ビルのモニターから、オレたちが歌おうとしていた曲が・・・TRIGGERの新曲として流れ出たんだ」
二階堂さんの話を聞きながら、あの日のみんなの顔が浮かぶ。
驚きと、どこにもやれない怒りと、悲しさに彩られた・・・みんなの、顔・・・
楽「そう、か・・・だからデビュー曲として発表したのは、既存の曲だったのか・・・」
大「社長だって、オレたちだって不本意だったよ。けど、そうするしかなかったんだよ。歌えないだろう?後出しのオレたちが、TRIGGERの歌をデビュー曲としてだなんて」
楽「けど、それと愛聖が被害者だってのは、話が繋がらない」
大「それが残念な事に、繋がっちまうんだよ」
『二階堂さん、その話はもう・・・』
それ以上、話さなくてもと二階堂さんの顔を見れば、二階堂さんは小さく首を横に振って、また楽を見据える。
大「TRIGGERの新曲としてオレたちの曲が流れたあの日・・・八乙女、アンタ愛聖に電話かけて来ただろ?きっかけは、それだった。メンバーのひとりが、愛聖がオレたちの曲をそっちに流したんじゃないか?って、疑惑を持ったんだ」
楽「愛聖がそんな事するわけないだろう!そんな事くらい分からないのかよ」
大「もちろん普段なら分かる事だよ。けど、分からなかったんだろうな・・・その時の心情からしたら、そう思ってしまったアイツの気持ちは、オレだって分からなくもない」