第16章 動き出した真相
楽「被害者・・・どういう意味だ」
陸「だ、だから、その・・・」
楽「分かった、もういい。その続きはこいつから直接聞く・・・来い愛聖」
『ちょっと楽!』
掴まれた手を振り解こうとしても楽の手はそれを許さず、私を引っ張るようにして歩き出す。
振り返って七瀬さんに助けを求めれば、きっと七瀬さんは助けてくれるけど、そうなれば夜道に紡さんがひとり残されてしまう。
どうしたものかと思いながらも、楽の歩幅に負けて着いていくしかないと諦め掛けた、その時・・・
「ちょーっと待った!」
聞きなれた声と駆け寄る足音に、楽も私もその足を止めた。
『二階堂さん、どうして・・・』
大「どうしたもこうしたもないっての。全く・・・ちょっとそこのイケメンのお兄さん?うちの大事な後輩ちゃんをどこに連れてくおつもりで?」
はぁ・・・とわざとらしくため息を吐きながら、二階堂さんが楽に声をかける。
楽「俺は別に、こいつと込み入った話があって」
大「へぇ?込み入った話っつうのは、こ~んな時間に?こ~んな夜道で無理やりするほどの、込み入ったやつなのか?」
えっと、なんだろ?
なんか二階堂さんの物言いに不自然さが満載と言うか・・・なんでわざわざコミカルな感じに話してるんだろ?
楽「これは俺たちと愛聖の話だ。関係ないやつは黙ってろ」
『楽、そういう言い方は良くないよ!それに楽が聞きたい話には、二階堂さんだって関係してるんだから・・・』
大「だよな?」
『え・・・?』
まるで全てを知っているかのように相槌をうつ二階堂さんに、私は思わず顔を見上げる。
大「ちょい、リクから聞いた。お前さんたちが遅いから途中まで迎えに出てみれば、マネージャーとリクが立ち尽くしてるところに遭遇した。な~んか顔色悪い2人に聞けば、愛聖が無理やり連れて行かれてと聞いたら、お兄さんはヒーローに大変身ってわけよ」
なるほど・・・それがさっきの、ちょーっと待った!っていうのに繋がる訳ね。
っていうか、ヒーローって・・・そういう感じで現れるんだっけ?
ヒーローって、なんかこう・・・颯爽と現れて・・・
・・・じゃなくて!
次々と浮かんでは消えていく疑問符に埋もれそうになりながらも、どこか飄々としている二階堂さんにぎこちない笑みを向けながら話の続きを待つ。