第16章 動き出した真相
楽「邪魔するな、七瀬。俺は紡と話してんだ」
陸「呼び捨て?!マネージャーいつの間にそんな仲良くなったの?!じゃなくて・・・マネージャーが困ってるじゃないか!」
紡「陸さん、私は大丈夫ですから・・・」
飛び出して行った七瀬さんが楽と紡さんの間に入り込むのを見て、私もその場に駆け寄った。
楽「愛聖、お前こんな時間になにやってんだ?」
『私は七瀬さんとコンビニ行った帰り。楽こそ、こんな夜道で紡さんに詰め寄るとか、何考えてるの?』
楽「俺は聞きたい事があったからだ。紡、話の続きをしよう」
陸「マネージャーが困ってるって言ってるだろ」
楽「なら、お前が話せ、七瀬陸。どうしてサウンドシップの時、あの曲を全員で完璧に歌えたんだ」
もしかして楽は・・・あの時の事を紡さんに聞いてたの?
チラリと紡さんを伺い見れば、なんとも居心地悪そうに俯いている。
陸「それは・・・」
『七瀬さん、話す必要はありません』
真っ直ぐに七瀬さんを見て言えば、楽はまた紡さんの肩に手をかける。
楽「お前が話さないなら、紡から聞く。紡・・・人がいない所に行こうか」
紡さんの肩を引き寄せようとする楽を見て、七瀬さんが1度ギュッと目を閉じて息を吐く。
陸「・・・盗まれたんだよ、あの曲」
楽「盗まれた?どういう事だ」
七瀬さんの言葉に、楽が紡さんから手を離す。
陸「あの曲はもともとオレたちのデビュー曲で、沖縄でPVも撮影してたんだ・・・それなのに、あんたの所の音楽プロデューサーに、デモか入ったディスクを盗まれたんだ!」
紡「陸さん!」
楽「本当、なのか?」
陸「こんな嘘、ついたりしない」
苦しそうな顔でグッと手を握りしめる七瀬さんの背中に手を当て、それ以上はもう、何も話さなくていいからと小さく首を振る。
楽「あの曲・・・お前たちから盗んだ曲を、俺たちは歌ってたのか・・・?」
ひとり呟く楽を横目に、紡さんと七瀬さんにひとまず寮に帰りましょうと歩き出せば、楽に名指しで呼び止められ、振り返る。
楽「愛聖。お前は・・・お前は全部知ってたのか?知っててTRIGGERがあの曲を発表した時、あの曲を・・・いい曲だと言ったのか?」
『それは・・・』
陸「愛聖さんに絡むなよ!愛聖さんだってある意味、被害者なんだから!」