第16章 動き出した真相
そう言うと七瀬さんは、早く見たい!待ちきれないよ!と言いながらコンビニ袋を持ち直した。
撮影開始、かぁ。
真っ白なスケジュールの中で、唯一存在を示す仕事がもう少しで再開されると思うと、なんだか緊張する。
逢坂さんの出演シーンは、本人が七瀬さんに言った通り今のところはない。
あとは私の重要シーンが終わった後に、少し出演があるくらいで。
それと違って、楽は・・・結構いろいろと絡みがあるんだよね。
この間の日向さんのこともあってか、楽と顔を合わすのは何となく・・・気が重い。
もちろんそれは、楽が悪いとかではないのは分かってる。
いつも通りの私で、いられるといいんだけど・・・なんて考え事をしながら歩けば、隣を歩いていた七瀬さんにグイッと腕を掴まれて路地角へと引っ張られる。
『・・・七瀬さん?』
陸「シーっ・・・ねぇ、あそこにいるのってマネージャーじゃない?」
『えっ?!』
今さっきまで楽の事を考えていた私は、思わず驚いて声を出してしまい慌てて自分の口を押さえて、そっと七瀬さんの後ろから覗き見る。
『ホントだ・・・紡さん』
・・・と、楽?!
陸「もう1人は後ろ姿だから誰だか分からないけど、なにを話してるんだろう」
七瀬さんと顔を合わせて小さく頷いて、耳を済ませて話し声を聞いてみれば、それは・・・
楽「沖縄で会ったのは、俺たちの曲が出る前だろ?それなのに、なんで知ってるんだ?」
紡「いえ・・・その・・・」
沖縄・・・?
アイドリッシュセブンが沖縄に行ったのは、確かレビュー曲のプロモーション撮影だった。
楽「もしかしてアンタ、何か知ってるんじゃないのか?」
紡「っ・・・、さっきのは私の勘違いです」
楽「話してくれ!なにかあったんだろ?!」
楽が紡さんの肩を掴むのを見て、このままじゃ紡さんが!と思ったら、いつの間にか七瀬さんが飛び出していて。
陸「やめろよ!嫌がってるだろ!」
紡さんを庇うように自分の背中の後ろに隠し、楽と距離を置くように、七瀬さんが数歩下がる。
紡「・・・陸さん?!」
陸「マネージャー、大丈夫?・・・こんな所で乱暴な事するなん・・・えっ?!や、八乙女楽?!」