第16章 動き出した真相
「それは、私が佐伯さんをどうにかするとでも?」
大丈夫?と聞かれた事に対して冷ややかに返せば、大神さんは言葉の意味を汲んだのかクスクスと笑い、思わず眉を寄せる。
万「一織くんの事は全く心配してないよ。むしろ心配なのは、こっち」
朦朧としながらも靴を脱ぎ捨てる佐伯さんに、大神さんは視線を落とす。
万「今ならまだギリギリセーフっぽいけど、完全に寝落ちちゃったら・・・多分、一織くんの手を煩わせちゃうんじゃないかなって思っただけだよ」
「この時点で既にって気もしますけどね」
はぁ・・・と大きく息を吐けば、大神さんも確かにねとまた笑う。
万「愛聖は昔から、眠くて眠くてどうしようもないって時はやたら甘えてわがままになるタイプだったけど、大人になってからもそこは変わってなかったから」
「佐伯さんが甘えてワガママは今もあまり変わらないのでは?それに・・・甘ったれなら他にも1人、知ってますからなんとかなるでしょう」
不意に出た言葉に、今もスヤスヤと眠っているであろう人物の顔を思い出し重ねる。
彼も大概、甘ったれですから。
そして重度のブラコン・・・
それから本人にはその自覚はない、と。
「部屋に連れて行くのは、手間でもなんでもありませんよ。何かあった時は本人の許可をすっ飛ばして部屋に立ち入る事の承諾は前に二階堂さんが佐伯さんから貰ってますし」
万「そっか。じゃ、お願いしちゃってもいい?」
「構いませんよ。大神さんも早く体を休めた方がいいでしょうから、これくらいは別に」
日頃から私たちのこ事でも色々とお世話になっているし、それを含めてという訳ではありませんが休養は少しでも長く・・・と。
それではと大神さんがドアの向こうに消えて行くのを見送ってから鍵を閉め、いつの間にか寝入ってしまっている佐伯さんを揺り起こす。
「女性がこんな所で寝るのは如何なものかと思いますよ、佐伯さん?」
声を掛けても壁に背を預けてピクリとも動かない相手に、それでもという具合いに何度も声を掛けながら揺すってみても、全くと言うほど起きる気配はない。
「あなたは本当に・・・困った人ですね」
そう呟きながらも、その姿になぜか怒れない自分がいる。
寧ろ、そんな姿がカワイ・・・・・・コホン。